病院や医療機関における看護師の人手不足は、重要な課題となっています。
またわが国では、超高齢化社会を迎えることにともない労働人口減少が懸念される中、准看護師の市場価値も高くなる傾向にあります。
これまで家事・育児などに専念していた「潜在看護師」の活用が推進され、准看護師が医療の現場で活躍できる機会も増えています。
この記事では、准看護師の仕事内容や求人の多い職場に加え、准看護師をめざす方に向けた資格取得の手順やポイントについてもご紹介します。
准看護師とはどんな看護師?
准看護師の業務は、医療機関などで実際に医療行為に携わることです。
看護師の資格には正看護師・准看護師の2つがありますが、准看護師も正看護師と同じように医療行為をするため、仕事の内容はほぼ変わりません。
おもな仕事場は病院・クリニック、訪問看護、高齢者や障がい者向けの福祉施設などです。
正看護師と准看護師の大きく異なる点は、資格発行元の違いです。
正看護師免許は厚生労働大臣が発行し「国家資格」にあたりますが、准看護師免許は「都道府県知事」が発行し、都道府県資格となります。
ただし、准看護師の職場は資格を発行した都道府県に限定されません。
全国どこでも、看護師として働くことが可能です。
准看護士と正看護師の違い
准看護師と正看護師の違いで最も大きいのは資格そのものの違いです。
正看護師は厚生労働省が発行する国家資格であるのに対し、准看護師は都道府県が発行する資格です。
正看護師は専門の教育機関に2年~3年通い、国家試験に合格する必要がありますが、准看護師は都道府県が指定した教育機関に決められた日時通学し、知事試験を経て資格を取得します。
なお、准看護師の資格は都道府県で発行されますが、他の都道府県に転居した際にもそのまま行使することができます。
以上のように、准看護師は資格の取得にかかる期間が正看護師と比較して短く、取得までにかかる学費も低く抑えることができます。
また、准看護師の実務経験があれば正看護師へとキャリアアップすることも可能です。
業務内容に大きな差はない
業務内容は、正看護師と准看護師で特に大きな違いはない場合がほとんどです。
ただし准看護師は、看護についての自己判断は基本的に行わず、医師や正看護師の指示に従いながら業務を行う流れとなっています。
また勤務時間や日程については、パートやアルバイトでの求人が多い准看護師の方が柔軟に設定しやすく、「日中のみ」や「時短勤務(育児シフトなど)」、「午前中のみ」など、比較的時間を自由に決めることが可能です。
主婦やWワークをしている方にとっては准看護師としての働き方の方が都合良いため、正看護師の資格を取得せず准看護師のまま働き続けるケースも少なくありません。
給与水準は正看護師のほうが高い
給与の水準は正看護師の方が高く、年収で比較すると約60万から100万円ほどの違いがあります。
また正看護師は管理職などへステップアップすることや、助産師や保健師といった専門的な知識・技能が必要な資格を取得することもできます。
一方准看護師は管理職に昇進することは難しく、助産師など専門職の資格を取得するには正看護師となることが必要となります。
求人数は正看護師が多め
求人数については、近年は准看護師の需要が落ちてきている一方で、正看護師の求人数の方が倍近く多くなっています。
国が看護師不足解消の対策の一環として、准看護師を廃止して正看護師に一本化していきたいということもあり、准看護師を積極的に採用する病院が減りつつあることが大きな理由です。
特に規模の大きい病院ではその傾向が顕著で、准看護師の募集は一切行わないというケースもよく見られます。
とは言うものの、給与水準が低く雇用しやすい准看護師は経営にそれほど余裕のない個人診療所やクリニック、介護施設などからの求人がまだまだ多く、今後も一定数の需要が見込めると考えられています。
准看護師の仕事の特徴
前述したように正看護師と准看護師の仕事内容はほとんど変わりません。
しかしながら、正看護師と比べると給与が低いことがあります。
超高齢化社会を迎えた現代社会では、准看護師も正看護師同様には売り手市場であると言えますが、給与アップやさらなるスキルアップを求めて正看護師を目指す人も少なくありません。
また、賃金の不公平感や求められる看護知識や技術の質が高くなってきていることを背景に、准看護師資格の廃止の動きもあります。
このような背景もあり、准看護師の受験者も減少傾向にあります。
すでに准看護師として勤務している看護師の中には正看護師資格取得に向けて、単発の仕事をしながら学校通い、勉強する人たちも増えてきています。
准看護師の求人が多い仕事にはどんなものがある?
准看護師は正看護師と比較して給与水準が高いとは言えませんので、人件費をなるべく抑えて経営していきたい診療所やクリニックなどで需要があります。
ちなみに、診療所やクリニックとは19床以下の小規模の医療施設を指します。
診療所やクリニックでの業務内容ですが、正看護師と准看護師でほとんど違いはありません。
また、准看護師はパートやアルバイトといった就業形態での求人も多く、就業時間がある程度自由に決めることができるなど、働く時間や日にちをコントロールしやすい傾向があります。
また老人ホームや居宅介護支援サービス、デイサービスなど、介護事業の現場でも准看護師の需要は高くなっています。
介護の職場では准看護師が多く就業しており、正看護師との業務の区分が明確にされていることが多く、正看護師と同じ業務内容であるにも関わらず給与が同じといった事態が避けやすいという傾向があります。
そのほかの就業先としては、訪問看護、学校、企業など病院以外での職場も、求人数自体は少ないもののある程度は存在します。
准看護師の仕事は比較的就業時間を自由にできるアルバイトやパートの形態での求人も多く、昼間のみや短時間、フレックス勤務など、プライベートとの両立を可能にしやすいという特徴もあります。
子育てが一段落してから准看護師の資格を取得する方も多く、子育てや親の介護などで働く時間が十分に取れないといった方でも、准看護師は働きやすい仕事のひとつと言えます。
准看護師になるには
准看護師資格は正看護師のような国家資格ではなく、知事資格と呼ばれる「都道府県が与える資格」に該当します。
准看護師になるには、保健師助産師看護師法に基づいて行われる准看護師試験に合格する必要があります。
准看護師試験を受けるには、以下の方法があります。
1.中学を卒業して准看護師養成所に進学し、2年間学んで卒業することで受験資格を得られます。
2.中学卒業後、高等学校衛生看護課に進学し、3年間学んで卒業すると受験可能になります。
ちなみに、准看護師養成所へ通うために年齢制限はありません。
そのため、高校を卒業してから進学することが一般的です。
定時制も設けられていますから、社会人や主婦などで准看護師への転身を図る方も少なくありません。
准看護師試験に合格すると、准看護師の資格を取得することができます。
准看護師になるメリット
1.短期間かつ低予算で看護師資格を取得できる
時間的・経済的な事情などがあり、短大や大学への進学をいったん諦めても取得できる看護師資格が准看護師です。
そのため准看護師として何年かしっかり働き、時間やお金を確保してから正看護師の資格を取得する方も数多くいます。
正看護師をめざすより短期間・低予算で看護師になれることは、准看護師資格の大きなメリットです。
2.就職・転職に困ることがない
看護師は就職・転職がしやすいと言われますが、これは正看護師も准看護師も同様です。
小規模なクリニックや個人病院などでは、まだまだ准看護師の需要が多い傾向にあります。
高度な専門性などを身につける予定がなくても地域医療に貢献したいと考えている方にとっては、准看護師は非常に役立つ資格といえます。
准看護師として働く看護師の声
人のためになる仕事がしたいという漠然とした思いで准看護師を目指しました。
元々勉強が苦手でなかった私は、受験勉強はそれほど大変ではありませんでした。
しかし、実際就職して現場に入ると忙しさや夜勤の仕事など体力的にきつさを感じることが多く、辞めたいと思うこともしょっちゅうでしたが、仕事に慣れてきていろんなものが見えるようになってきてからは、患者さんの「ありがとう」という言葉や、世の中のためになっているという実感から、日々やりがいを感じています。
今は、仕事を通して更にスキルアップしたいと思うようになりました。
しかしながら、近年、准看護師資格の廃止が叫ばれるようになり、本気で正看護師を目指したいと考えています。
学業と仕事の両立は、けっして楽ではないですが、必ず正看護師資格を取得したいと考えています。
まとめ
今回は、2つある看護師資格のうちの1つ「准看護師」についてくわしくご紹介しました。
准看護師のおもな特徴は「国家資格ではなく都道府県資格である点」、「正看護師より早く安く資格が取れる」、「努力次第で正看護師にステップアップできる点」です。
准看護師資格についてはさまざまな憶測がありますが、現状で准看護師資格を持っている方は今すぐ大きく影響を受ける可能性は低いでしょう。
今後も地域医療の世界では必要とされる機会が多い仕事ですし、活躍の場は数多く用意されているはずです。
スーパーナース編集部
看護師の働き方を支援して30年の株式会社スーパーナース。
派遣や転職をはじめとした就業経験豊富な看護師と編集スタッフが「看護師のはたらく」に関する情報を日々お届けします。