看護師として医療機関で働く人なら、必ず目や耳にする機会の多い「クリニカルラダー」という言葉。
医療機関によっては「キャリアラダー」と呼ばれることもあるかもしれません。
上司や教育担当者から頻繁に聞かされる言葉だけど、本来どういう意味なんだろう……? と、心の中で疑問を持っている方もいるでしょう。
しかし、いまさら誰かに聞くことも難しいとちょっと悩んでしまう方も多いのでは?
そこでこの記事では、看護師のキャリアの評価システムを指す言葉「クリニカルラダー(キャリアラダー)」について、くわしくご紹介します。
クリニカルラダーとは
クリニカルラダーとは、簡単に説明すると「看護師の評価システム」を指す言葉です。
ここでは、クリニカルラダーの概要についてさらにくわしくご説明します。
1.「ラダー」とは「はしご」という意味
「クリニカルラダー」の「ラダー」は「はしご」という意味です。
看護師が新人からキャリアを積み重ねて一人前になり、さらに上級のポジションに就くまでを階段を昇る様子にたとえて、この名称がつけられています。
2.クリニカルラダーにおけるキャリアステップは「5段階」
クリニカルラダーにおいて、キャリアのステップ(段階)は、5つに分けられています。
それぞれの呼び名は「レベルⅠ」~「レベルⅤ」となっており、数字が大きくなればレベルが上がることを指しています。
3.キャリアステップの各レベル
クリニカルラダーで示されているキャリアステップの5段階は、以下のような水準とされています。
・レベルⅠ:初心者
定められた手順に従い、必要であれば指示や助言に基づいて、看護を実践できる段階
・レベルⅡ:新人
標準の看護計画に則って自身で看護の実践が可能となる段階
・レベルⅢ:一人前
看護を受ける患者さんの状態・状況に合わせ、臨機応変かつ適正に看護を実践できる段階
・レベルⅣ:中堅
さらに視野を拡げ、予測的見地に基づいた看護も実践できるようになる段階
・レベルⅤ:達人
どんな状況においても患者さんに最適で質の高いケアを行うことができ、看護師たちのリーダー的な役割や目標の達成に直接的な貢献が可能なポジションに就ける最終段階
クリニカルラダーの評価方法・目標管理とは
クリニカルラダーにおいては、評価に用いる基準として4つの基本概念が設けられています。
1.到達目標
2.看護実践能力
3.組織的役割遂行能力
4.自己教育研究能力
この4つの基本概念に基づき、前の項目でご紹介した5つのレベルそれぞれに応じて設定された到達目標に基づいて評価を行います。
具体的な評価方法ですが、各項目についてレベルに応じ以下のように「5段階評価」を行います。
S:非常によい
A:よい
B:ふつう
C:努力が必要
D:非常に努力が必要
上記の評価に際しては「他社評価」はもちろんのこと、評価を受ける本人による「自己評価」も行います。
この2つの評価を組み合わせ、評価する側は評価を受ける側の自己認識を把握でき、評価を受ける側は自身の認識と相対的評価との進捗の差を意識できます。
また自己評価をつねに意識することで、キャリアの進捗に対する意識に主体性が生まれます。
【クリニカルラダーにおける目標管理の方法】
クリニカルラダーの評価は定期的に実施し(数か月ごとが望ましい)、その都度目標の達成度や進捗状況を確認します。
それらを実施する際には、目標管理シートを積極的に活用し達成状況を可視化しておくとよいでしょう。
今ある課題も認識が容易になり、対応策を講じやすくなります。
評価のスケジュールとしては、4月にクリニカルラダーの評価を開始し年間目標を立てた場合には4~5か月後(9月など)に「中間評価」を行うサイクルが一般的です。
目標管理シートは医療機関ごとにさまざまな書式で作成されており、1枚の用紙を用いる場合もあれば、中間評価を行うごとに別の目標管理シートを使用する場合もあります。
クリニカルラダー実施における問題点
クリニカルラダーを実施するにあたり、発生する問題点も指摘されています。
クリニカルラダーの問題点としては、以下のようなポイントが挙げられます。
1.給与などに直接影響しがち
クリニカルラダーは目に見える点数評価として活用しやすく、それが給与や昇進などの評価にも影響しすぎる側面があります。
点数評価にとらわれすぎると、「患者さんにとってどんな看護師になりたいか」など、自身の看護観の優先順位を下げてしまうことにつながるかもしれません。
2.技能以外の評価ポイントへの認識が薄くなる
クリニカルラダーでは技能など数字の評価がメインになっているため、看護師に欠かせないヒューマンスキル(人に親切に接することや円滑なコミュニケーション能力など)の評価を忘れてしまいがちです。
看護師としてヒューマンスキルを大切にしている人も多いと思いますが、それらの適切な評価システムがないことを不満に感じる可能性もあるでしょう。
まとめ
今回は、看護師独自の評価システム「クリニカルラダー」の概要と評価方法・問題点などについてご紹介しました。
課題もあるクリニカルラダーですが、適正に活用することで看護師のモチベーションを上げ、能力を引き出すという大きな目的を持っています。
クリニカルラダー実施においては、目標の設定や管理、評価方法などについて慎重に協議し、公正性を重視して取り決めを行うことが求められるでしょう。
スーパーナース編集部
看護師の働き方を支援して30年の株式会社スーパーナース。
派遣や転職をはじめとした就業経験豊富な看護師と編集スタッフが「看護師のはたらく」に関する情報を日々お届けします。