看護師として長く働き続ける上で心配なのが、職業病ともいわれる「腰痛」や、腰痛をこじらせた結果発症してしまう「ヘルニア」など”腰”に関する症状です。
腰痛持ちのナースさんが転職を考える場合、それが職場選びの支障になってしまわないか心配になりますね。
そこで今回は、看護師とは切っても切り離せない腰痛・ヘルニアとの関係や、腰のトラブルに悩みがちな看護師さんが転職時に気をつけたい点についてご紹介します。
腰痛持ち・ヘルニア持ちのナースさんに合った、腰に負担をかけない転職先についてもいくつかご紹介しますので、気になっている方はぜひ参考にしてください。
腰痛・ヘルニアに悩むナースさんはなんと全体の5~7割も!
最初に、看護職と腰痛・ヘルニアの関係性についてご紹介します。
実際に腰痛にお悩みのナースさんは全体の5~7割にも及ぶとされ、「腰痛やヘルニアはナースの職業病」といわれることも冗談では済まされなくなっています。
ここでは、腰痛やヘルニア持ちのナースさんはなぜそんなに多いのか、何が原因で腰痛になるのかについてご紹介します。
看護師が腰痛・ヘルニアを抱えがちな原因は?
ナースさんが腰痛になりがちなことには、多くの要因があります。
以下に挙げているのは、その中のおもな一例です。
・基本的に立ち仕事がメインで、座っていられる時間が非常に短い
・中腰になって作業をし続ける機会が多い
・患者さんの移動や介助で、腰に負担をかける作業が多数ある
しかも仕事内容によっては、上記のような作業を丸一日ほとんど休まずに続ける必要がある場合もあります。
よほど体力に自信のある方でも、腰痛やヘルニアを発症してしまうケースが少なくありません。
また、複雑な要因ですが職場でのストレスが多いと腰痛を発症しやすいともいわれています。
このほか、腰痛・ヘルニアが労働災害の1つとして問題視されつつある介護業界と比較し、看護業界では腰痛・ヘルニアがまだ深刻に受け止められる機会が少ないという点を挙げる人もいます。
いずれにしても、ナースという仕事そのものに、腰痛・ヘルニアを発症する要因があることは事実です。
日ごろから筋肉を増やすことを意識すれば腰痛の悪化を予防できるとはいいますが、ライフスタイルや環境によっては限界もあるでしょう。
また、「病気やけがをしている患者さんと比べれば自分の腰の痛みなどたいしたことがない」と思い込み、適切な治療を受けず悪化させるという悪循環も指摘されています。
腰痛・ヘルニアに悩む看護師におすすめの転職先とは?
1度腰痛やヘルニアになってしまうと、ナースの仕事を続けながら完治させることは難しいものです。
そのため、腰痛をこれ以上悪化させないために転職を考える人も多いのが実情。
ここでは、腰痛やヘルニアにお悩みのナースさんが、悪化を防ぎながら仕事をするのに向いている転職先や、逆に注意が必要な職場についてご紹介します。
1.腰痛持ちのナースさんに最適な転職先
【眼科】
眼科は1日中立ち仕事に携わるということは少なく、座って作業できる機会が多いため腰痛やヘルニアと付き合いながら働くナースさんにはおすすめといえます。
また、ビルテナントや小規模クリニックなど、狭いスペースで仕事をする場合が多い点も、歩き回る機会を減らすことにつながります。
患者さんの介助をする機会もあまりないため、そういった意味でも腰への負担を低減できるでしょう。
【耳鼻科】
耳鼻科も、腰痛・ヘルニア持ちのナースさんに比較的おすすめの職場です。
病棟を持たない小規模クリニックが多いため、頻繁に立って移動する機会が少ない点や、残業や夜勤が少ないため毎日しっかり身体を休める時間を取りやすいという特徴があります。
2.腰痛・ヘルニア持ちのナースさんに要注意な職場
【総合病院の外来】
常に広い院内で患者さんを案内し、1日中立ったり歩いていたりしなければなりません。
お昼の休憩を取る暇もなく、午後半ばまで立ちっぱなし、歩きっぱなしという日もあるでしょう。
介助をしながら移動する機会も多いため、さまざまな診療科のなかでも腰への負担の大きさはトップクラスといえます。
本来、外来の看護業務は基本的に腰への負担が少ないといわれるのですが、広くて忙しい総合病院となると歩いての移動が最も大きな腰への負担となってしまいます。
【小児科】
小児科は患者さんが主に15歳までの子どもであるというだけで、さまざまな症状によって来院する患者さんが多い診療科です。
そのため患者さんの絶対数が多くなりますから、ナースさんも長時間立って歩き回る状態になります。
自力で歩けない患者さんも少なくないため、介助の機会も頻繁になることが予想されます。
【高齢者施設】
「施設勤務なら、入所者さんのお世話は介護士さんがするから大丈夫」と思うかもしれませんが、意外に看護師も忙しくしています。
確かに高齢者をケアする施設で、入所者さんの介護・介助にあたるのは看護師よりも介護士やヘルパーがメインです。
しかし、看護師の仕事も決して楽ではありません。
各種測定やお薬を飲むときの介助、点滴など、病棟での業務と同様の作業がつねにともないます。
中腰になる機会が多くせわしなく歩き回ることにもなるため、大掛かりな介助などがなくても腰への負担は多めになりがちです。
【病棟勤務】
お勤めになったことのある方はすでにご存じでしょうが、やはり病棟では腰に負担が多い業務が沢山あります。
入院患者さんをベッドやストレッチャーに乗せて移動する機会も多く、おむつ交換などの介助業務を丸一日こなさなければなりません。
また入浴やトイレのお手伝いなど、患者さんの体重を支えて移動する機会が非常に多くなるでしょう。
点滴・栄養の交換など細かな作業でも何かと中腰になる必要があり、それほど重いものを持ち上げたりしなかった1日でも、「腰に負担がかかっているな」と実感するかもしれません。
3.「ノーリフト」という考えに基づいた業務を取り入れている職場はおすすめ!
最近は医療や介護の業界における職員の腰への負担に配慮し、「ノーリフト」という考え方を取り入れている医療機関や施設が増えています。
これらの機関・施設では福祉用具・介助器具の導入により、人の力で患者さんを移動させる機会を減らし、職員の身体的負担を低減するよう取り組んでいます。
実際に、人力だけで患者さんの移動を行っていると患者さん側の負担が大きくなることもあり得ます。
ナースさんも頑張って介助をすることで腰痛やヘルニアを引き起こしてしまうのに、介助される側の患者さんまで体に痛みが出てしまうという事態は、病院としても避けたいものでしょう。
しかし、ノーリフトに取り組んでいる病院が増えているといっても、全体の数はまだまだ少なめ。
それらの職場を自力で調べて、求人を見つけることは意外に大変かもしれません。
腰痛やヘルニアにお悩みのナースさんが、ご自身の体調に合った職場探しをするには転職エージェントの利用がおすすめです。
ご自身の希望や要望に合った求人をプロのスタッフがしっかり探して、優先的に紹介してくれます。
まとめ
今回は、ナースさんと腰痛・ヘルニアとの関係をはじめ、腰痛・ヘルニアにお悩みのナースさんにおすすめの職場や、注意が必要な職場などについてご紹介しました。
腰痛がつらいときにはあまり無理をせず、場合によっては転職も視野に入れる必要があるかもしれません。
転職する場合にも、ご自身のコンディションに合った職場を選び、身体への負担を低減できるようにしましょう。あまり我慢をしすぎると、症状がもっと悪化してしまう可能性も。
入院・手術などで働けなくなる時期を作るような事態に発展させないためにも、あまりに症状がひどければ働き方を見直してみることも一案でしょう。
スーパーナース編集部
看護師の働き方を支援して30年の株式会社スーパーナース。
派遣や転職をはじめとした就業経験豊富な看護師と編集スタッフが「看護師のはたらく」に関する情報を日々お届けします。