Vol.014 かわいいんだけど。
先日、施設の入居者さんのお話をいたしました。
クリニックでは入居者さんのお誕生日健診をしていました。施設の看護師さんが付き添いできてくれます。
当日はもちろん空腹でみえるので、出来るだけ早い時間に来院していただいていました。Wさん女性80代は認知症で腰が曲がり歩行も介助が必要な小さくてかわいらしい方です。
心電図の際はもちろんベッドに仰向けになっていただきます。
Wさんにとって仰向けの姿勢は背中に痛みがあるようで、なかなか仰向けの姿勢を保持できません。そこで、施設のナースYさん(偶然ですが、看護学校の後輩です。)が体を押さえてくれます。
心電図と共に採血もするのでなるべく仰臥位の時間を短時間にしてあげたいのですが、押さえられると抵抗します。Yさんが腕を押さえようとWさんの口のそばにYさんの手が差し掛かったところ、
”ガブッ”と噛んでしまいました。
おなかが空いていたのと、背中が痛いのに押さえられたのが重なってついついYさんの手を噛んでしまいました。
思わず「痛い!」と叫ぶとWさんはパッと手を離し、
「ごめんね、ごめんね」と謝ります。
Yさんの手にはくっきりWさんの歯型が残り、うっすらと内出血を起こしています。施設にいる時のWさんはいつもにこにこしているかわいらしいおばあちゃんなのですが、意に副わなかったりすると少々噛み癖が出るようです。
保育園の子供もけんかもしていないのに突然、お友達の手を噛むという事がありました。たまたま口の前を手が通ってついつい
”パクッ”と。
『歳を取ると子供に戻る』といいますが、Wさんも子供に戻っていたのかもしれません。