Vol.013 再会
大学病院は様々な疾患の患者さんがいます。多くはホームドクターから紹介された方が治療に見えます。
50代の男性Mさん、警察官です。警察官というとこち亀の両さんのようながっちりしたイメージですが、Mさんは身長185cmのすらっとした方です。100万人に一人という珍しい「腹膜偽粘液腫」で入院されました。
物静かな方で、いつも新聞や本を読まれています。ある日、Mさんのお部屋の担当になりました。これまでMさんとゆっくりお話したことがありませんでした。この日Mさんも予定がなく病棟も落ち着いていたので、ゆっくりお話することができました。
ふぃにMさんが私の名札をみて「どこの出身?」と聞きました。私は関東の出身ですが、両親は地方出身者です。
「・・・県です。」
「・・・県のどこ?」と細かく聞いてきます。町の名前まで告げると
「なんだ、Fちゃんのとこの子かあ。家に帰って俺の名前を言ってごらん。お父さん知っているはずだから」
Mさんは私の父の幼馴染でした。お互い、学校を卒業して上京していたので、その後の行方がわからなかったのですが、意外なところで再会することとなりました。
その後、父は何度かMさんのお見舞いにきました。お見舞いがてら私がちゃんと働いているかチェックしていましたが。
Mさんが入院されたことで、40年ぶりの再会を果たせました。また、Mさんのおかげで両親に看護師として働く姿を見せることもできました。偶然が偶然を呼び・・・。
人と人の出会いは必然ではないように思います。今までの偶然の出会いを大切にしつつ、これから出会うかもしれない偶然に期待せずにいられません。