Vol.010 いくつになっても
前回、”いくつになっても女性”と書きました。
今回は、その第2弾。
大腸がんで手術目的で入院された70代の女性Oさんは昔、花街で芸者さんをしていたそうです。通常、入院される方の多くはパジャマを着ている方が多いのですが、さすがOさんは和式の寝巻き。それも襟を抜いて着ている姿は現役の頃を想像させます。初めての入院なので不安でいっぱい。元来、寂しがりやの性格(娘さん談)なので、別に用も無いのですがナースステーションにいる事務さんのところに行っては話し込んでいきます。
ある日、事務さんから「Oさん、何だか変。昨日も同じ事、話ていったけど」と。異変はすぐに現れました。Oさんの部屋はトイレの隣の8人部屋。
普通ならトイレから出るとすぐに病室なのですが、Oさんは何度となく迷子になって廊下をうろうろし始めました。
「私、迷っちゃって・・・。お部屋、どこだったかしら」とナースステーションに聞きに来ます。入院という環境の変化で認知症が出現しました。
Oさんが行きそうなところには同じ目印をつけ帰れるようにしました。しかし、この目印の意味も忘れてしまいます。
そんなある日の深夜、フラフラとトイレに行くOさんを見かけました。他のコールに出ている間にOさんは病室へ。10分程して別の男性2人部屋の病室からナースコールが鳴ります。(この患者さんはすべて自立している人なのにどうしたんだろう?)とりあえず訪室します。
「どうしました?」
「隣の人、外泊中なのに誰か寝てる」と
そっとカーテンを開けベッドを見るとそこにOさんが寝ていました。
トイレからまた迷子になり、たまたま空いていたベッドに潜り込んでしまったのです。熟睡しているOさんを起こし、ご自分のベッドにお連れしました。翌朝、Oさんは全く記憶になく・・・。
介護施設ではよくある話だそうですが、一般病棟では珍しい出来事です。
ただ、コールをくれた男性は、白髪のとってもダンディな男性でした。なぜ、離れたこの部屋で扉も閉まっていたのに寝ていたのか・・・。謎です。