Vol.009 介護施設のヒーローー
スーパーナースに入社する前に勤務していたクリニックの院長は30代で開業された方でした。
俳優で言うなら”堤 真一”をちょっと濃くした感じ。女性患者さんのファンも多く、診察が終わってもなかなか帰ろうとしない人も・・・。
先生は2週間に1度、介護施設の往診に行かれていましたが、平均年齢80歳代の女性入居者も例外ではありませんでした。その介護施設の大半は女性で、男性入居者は2~3人。その2~3人を取り合うこともあるようですが、やっぱり、自分より若い(?!)男性にはいくつになっても胸がトキメクようです。
往診日の朝は大変。普段なら髪は寝癖がついたままなのに、往診日はいつもより早く起きて、朝食も早々に済ませ着替えます。お化粧もバッチリ。もちろん、寝癖がついているなんてもっての外です。
パジャマから持っている一番いい服に着替えて、先生が来るのを『今か今か』とわくわくしながら待っています。女子学生のように・・・。
入居者すべてがこのような方たちばかりではありませんが、何人かがおしゃれをし、お互い競い合うことで施設内がなんとなく華やいだ雰囲気になるのです。
診察が始まると、1分でも長く先生と一緒にいたいのか、先生の手を握って離そうとしません。後ろで待っている他の入居者がヤキモキしているのもドア越しに伝わってきます。
そんな中、認知症のKさん(85)は
「ところで、あんた家の源さんは元気かい?」と話しはじめました。
もちろん、先生は源さんを知りません。でも「元気ですよ」と答えると、K さんは「そりゃ、よかった。それにしてもあんた(先生のこと)、いい男だねぇ」Kさんはうっとりしながらそう言うと自分のお部屋に帰って行きました。
この先生とKさんのやり取りは毎回、診察のたびに行われるそうです。
いくつになっても女性なんですねぇ。この歳になっても胸がわくわくするなんて羨ましいと思ってしまいます。だから女性は長生きなんですかねぇ。