Vol.007 どこに?
子どもはかくれんぼが大好きです。
“絶対、ここにいる!”とわかるようなところにも必死で身をかがめてかくれています。
まれに大人もかくれんぼするときがあるようで・・・。
身長138cmの小柄なRさん、48歳はご主人と娘さんに付き添われ、肝疾患の為入院してきました。
もちろん、娘さん(中学3年生)のほうが、成長期なので背も高く、体格もいいのです。(後ろから見ると親子が逆)
シングルベッドに小さなRさんが寝るとなんだかセミダブルのように見えます。普通の高さでは乗り降りが大変そうなので、短足ベッドにチェンジしました。入院生活は何ら問題もなく過されていましたが、1ヶ月程たった頃から、腹水が溜まりはじめ、(まるで妊婦さんのよう)動くこともままならなくなってきました。トイレまで歩く事も大変なので、ポータブルトイレを勧めましたが、頑として拒否。トイレ歩行時は介助となりました。その頃からアンモニア値も上がり始め、ついに肝性脳症になってしまいました。
ある日の夕方、ご主人と娘さんが面会に見えました。2人共、血相を変えてナースステーションに駆け込んで来ました。
「Rがいないんです。」
Rさんはこの頃、もうひとりでは歩く事が困難でした。師長をはじめ、病棟のスタッフで病院中を探しました。それでもRさんを見つけることができません。そんな中、Rさんの同室の患者さんからコールが。「Rさんのベッドの下に何か動くものが・・・」と。急いで行って」見ると、Rさんが横になっているではありませんか。
短足ベッドの下にもぐったものの、出れなくなってそのまま寝てしまったのです。Rさんを傷つけないよう引っ張り出し、ベッドに寝かせました。
結局、Rさんがなぜベッドの下にもぐったのか分からず・・・。
あの時ほど必死に人を探したことはありませんでした。
それから1ヵ月半後、Rさんは旅立ってしまいました。入院してきた時よりさらに小さくなってしまいましたが、今でもかわいらしいRさんは忘れられません。