Vol.003 夫婦愛 番外編
前回は素敵なご夫婦のお話をしました。今回は番外編、ご主人のことにをお話します。
80代のご主人(Kさん)はこの年代にしては身長180cm、肩ががっしりとして顔立ちもよく(昔はもてたんだろうなぁ)いわゆる“イケメン”のご老人です。若かりし頃はラグビーをされていたそうです。納得。
その後、弁護士になられ、毎日面会に見えるお嫁さんは「現役のころはとても厳しい人でした。」とおっしゃっていました。
ある日、お部屋から「お~い、お~い」と大きな声がします。訪室すると、「裁判所に行く!!」と仁王立ちしているではありませんか。
(最近、昼夜逆転してるし、裁判所に行くことにして、散歩に行こう)
「先生、では着替えをしませんと。」とパジャマから新しいパジャマに着替えをして、髪を整えて廊下に出ました。(残念ながら、病院の周辺は散歩が出来るところがなく)病棟の廊下を行ったり来たり。3往復目に「疲れた。帰ろう」と言われるので、お部屋に戻りました。Kさんをベッドに横にしながら
「ところで裁判はどうなりました?」
「うん、勝った!!」と誇らしげに答えられました。
認知症の方は新しい事はわからなくても、昔の事は忘れません。看護をしていると、おひとりお一人の歩まれた人生の1ページを垣間見れる時があります。
介護施設に勤めている友達が、「大変な事もあるけど、楽しいよ」と言っていたのを思い出しました。久しぶりに訪ねてみようかな。