Vol.0058 採血・注射時の失神にご注意![2014/12/05更新]
こんにちは。マツコです。
あっという間に12月!
クリスマスや年末年始も楽しみですが…
それと同時に、
「インフルエンザの季節」が
刻々と迫ってきております。
すでに、11月の第3週から
小学校を中心に急激に流行ってきているようです。
(例年の流れからいくと1~3月がピークでしょうか)
インフルエンザワクチンの接種は11~12月に!
と、様々な医療福祉機関でアナウンスされている効果もあってか、
先週末は、マツコが勤めるクリニックでも
インフルエンザワクチン注射を
希望される方が非常に多かったです。
ちなみに余談ですが、
今年のワクチン株は、
カリフォルニア、ニューヨーク、マサチューセッツ。
うちの院長いわく「都会的」…らしいです(笑)
あくまでこれが流行るであろうという
「予測」で決めているため、
たとえワクチンを接種しても、
別の型のインフルエンザには効果はありません。
また、ワクチン接種については、
人それぞれ考え方がありますので
希望されない方も多くいらっしゃいます。
マツコは昨年まで
毎年ワクチン接種をしていましたが、
念のため、今年は打たない事にしました。
というのも、昨年の接種時に、
いつもと少し様子が違ったのが原因です。
接種後30分くらいから、とにかく胸苦しい。
顔も真っ赤で涙目。
2時間くらいその状態が続き、
とてもつらかったのです。
卵アレルギーなどはないのですが…
さてさて、
インフルエンザワクチン接種の「副作用」
と言えば上述したような症状が、
まっさきに思い浮かぶと思います。
しかし今年、
マツコはレアなケースに遭遇しました。
ワクチン接種を希望された
スーパーナースの男性社員さんなのですが、
いつも通り先生の問診を受けて頂き、
普通にワクチン接種を行いました。
「今日は、大酒を飲んじゃダメですよ~」
なんて冗談を言いながら、
マツコは、後片付け。
彼はお会計をしている時でした。
「ちょっっ!大丈夫ですか!?」
受付の女性の声が聞こえました。
すぐに受付の方に目を向けると
真っ白な顔をした彼が、
ゆっくりと倒れていきました…。
え……ええええええ~~~!?
すぐに先生と駆け寄り、声を掛けました。
一瞬意識がなかったのですが、
徐々に意識は回復。
呼吸も問題ありません。
受け答えも弱々しいながらにも、
しっかりしています。
まさかの
「血管迷走神経反射性失神」でした…。
すぐに下肢を先生が拳上してくれたので、
マツコはライン準備をしました。
病棟勤務を離れて1年ちょっと。
久々に患者さんの急変に当たり、
これまた久々にマツコの
ナースアドレナリンが
大放出しました!!
できるだけ、穏やかに過ごしたい!
平和主義のNsですが、
看護師の血が騒ぐと言いますか。
このアドレナリン放出、嫌いじゃないです。
たま~には、出さないと看護師の感や腕が
鈍ってしまいますよね。
(きっと、共感できるナースさんは多いはず…!?)
しかし、
今回のようなインフルエンザワクチンでの
血管迷走神経反射性失神は、マツコも初体験でした。
だって、27G。0.5㏄の皮下注射です。
本人は打つ時も、
その直後も普通だったのです。
しかし、後々落ち着いてお話を聞くと、
彼は以前、採血で倒れたことがあり、
それ以後、かかりつけのクリニックでは
必ずベッドで横になって採血をしてもらっていたそうです。
ただ、彼の中のその「倒れる」という現象に対する
認識が少し違っていました。
「体調が悪い時に、血を抜かれるから貧血で倒れてしまう。」
と解釈していたのです。
そのため、今回は、
「体調も悪くなく、少量の注射を入れるだけだから、倒れない。」
と思い、
私たちにも、何も伝えなかったそうです。
確かに、一般の人からすれば、
「倒れる=貧血」
だと思うでしょう。
しかし、採血時など
針を刺されたことによって起こる失神は
血を抜く抜かないや、貧血は関係ありません。
みなさんもご存じのように、
血管迷走神経反射性失神とは、
針の穿刺によるストレスや痛み、排泄時などの刺激が、
迷走神経を介して脳幹血管運動中枢を刺激し、
心拍数の低下や、血管拡張による血圧低下などをきたす、
「生理的」反応です。
(参考:日本救急医学会 医学用語解説集)
ですから、失神を起こす方が
身体的・精神的に他の人に比べて
弱いわけではありません。
点滴を受けながら、倒れた彼は
「恥ずかしいなあ…。
もう、ひ弱キャラが定着してしまいます」
とおっしゃっていましたが、
決してそんなことない!
彼の名誉の為にも声を大にして言いますが、
この体質の方は、
たとえムキムキの格闘家だって
倒れる時は、倒れます。
そう。
まさに生理的反応なのです。
今回のことはマツコにとって、
とても教訓になりました。
彼のように倒れてしまう原因を、
誤解したままの患者さんも多いと思います。
今まで、
マツコが講師を担当している採血セミナーでは、
血管迷走神経反射性失神の
「対処法」を中心にお話していましたが…
血管迷走神経反射性失神に対する
「正しい説明の大切さ」を
今後の講義内容に入れようと思います。
今回は、たまたま
一度壁に寄りかかりながら、ゆっくりと倒れたため、
大きな問題にはなりませんでしたが…
これがストレートに後頭部から倒れ、
何か硬いものに頭をぶつけたら…
最悪のケースでは、亡くなってしまうことだってあり得ます。
医療者側の説明不足が、
患者さんの間違った認識につながり、
その方を危険にさらしてしまう…。
もちろん、
どの医療機関でも説明をしているとは思いますが、
やはり「患者さんに伝わっているかどうか」が大切!
私たち、
医療者にとって「あたりまえのこと」でも、
患者さんにとっては「???」のことがいっぱいです。
患者さんのちょっとした言動を見逃さず、
「認識にズレ」がないかを確認する!
できるだけわかりやすく、
次の危険を回避できるよう、
丁寧に説明していきたいですね。
医療者と患者さんに間には、
「常識のズレ」がたくさんある……。
そんな、大切だけど忘れがちなことを
あらためて再認識した出来事でした。
マツコ