Vol.0035 愛すべき人~じいちゃんはじめての手術~ [2014/06/12更新]
「オッカサン一人か?」
マツコがじいちゃんの病室に行くと、じいちゃんはこう尋ねます。
じいちゃんにとってマツコの相方(旦那さん)は、
マツコと結婚するまで30年以上、同居をしていたこともあって
結婚をして家を出た当初は、毎週、週末が近づくと
「週末には来るのか?いつ来るんだ?」
とお家で言っていたほど、ほんとにほんとに可愛い孫です。
もしかしたら、じいちゃんにしたら
マツコは可愛い孫を連れてった、憎くきオヨメかもしれません…。
だから、マツコが一人でお見舞いに行くと、
「マツコだけか?」
という質問になるのです。
って、一瞬スルーしかけたけど、じいちゃんっっ!
「オッカサン」て…。
マツコ、まだ誰の「オッカサン」でもないです…。
そりゃ、他人に想像妊娠させてしまうような見た目ですよ。
病院で働いていた時も、よく患者さんに
「子供は何人いるんだ?」とか
「子育てしながら、この仕事は大変だろ?」とか言われてましたけど…。
ちなみにじいちゃん、義母のことは
「おかあさん」と呼んでいます。
オヨメ2年目にしてすでに姑越えです。
お義母さん、なんだかすみません。
だけど、そんなじいちゃんも…すき(笑)
もーう、何を言っても許しちゃう♪
じいちゃんがそう言うならマツコ、オッカサンになります!
さてさて、そんなじいちゃんに術後のリハビリの必要性以外にもうひとつ
こんこんと説明したのが、術直後について。
不穏について、です。
じいちゃんにとって最初の難関です。
手術後は、
呼吸器もしくは酸素、尿バルン、マーゲンチューブ、ドレーン、点滴…
色んなものが付いています。
そのどれもが、不快極まりないものばかりです。
そんなものが付いている時に、麻酔の効果が薄れ、徐々に目覚めていく
夢見心地の人がやることはただ一つ。
不快なものは取りたい!
これって、例えどんなにしっかりした人で、理解もバッチリの人でも
やっちゃう時はやっちゃいます=不穏になる時にはなります。
マツコの看護師歴の中でも一番代表的な事例が下記になります。
その方は、40代の現役薬剤師さん。
眠前まではしっかり会話もされていたのに、
その1時間後、ナースステーションに現れた時には、
血だらけの病衣と病室から点々と続く血の跡。
患者さんを保護し、病室に向かうと
部屋中血だらけ…、まさしく血の海でした。
「何があったのですか?」
と伺うと、ちょいとニヒルな笑みを浮かべ
「踊って遊んでた」
と。確かに、血の跡をみると、踊っていたかのような曲線を描いています。
これ、誇長して書いているわけではありません。
本当に、サスペンスもビックリの血の海でした。
翌日、ご本人に昨夜のことを尋ねても、
もちろん何も覚えていらっしゃいませんでした。
ちなみに、ドレーン抜去でも動脈ライン抜去でもなく、
静脈ラインの抜去での出来事でした。
で、うちのじいちゃん。
とにかく身振り手振りでどこに何の目的で管が付いていて
そのどれも、取ったら大変なことになると
ある意味脅しに近いかんじで、じいちゃんはもちろん
マツコ自身も納得できるまで説明しましたが
やっぱり…
大丈夫かなあ…。
と不安を残しつつ、病室を去りました。
そして、手術当日。
マツコは、仕事だったので病院には行けませんでしたが、
そういえば、もちろん術後は部屋を変わるよね?
とふと思い、義父に確認をすると、
「そのまま、今の病室に帰るから何もしなくて良いんだって」
そのまま?今の病室???
いやいやいやいや!待ってちょ~だいっっ!!
じいちゃんの今の病室って、まさかのナースステーションから
一番遠い部屋ですよ?
そもそも、術後うんぬんの前に、83歳初めての入院を
そんなお部屋にしちゃうことにも若干疑問を感じていたのに、
術後直帰がその部屋?
ムリムリムリムリ!!
血だらけの上に、転落・転倒間違いないですっ!
下手したら、マツコの昔の患者さんにみたいに
「うお~い!うお~い!」
という声に導かれ、個室のその方の元に行くと
ハサミと先のない尿バルン???
ハサミ??滴る尿!?
…尿バルン切断です。
しかも、引っ張って引っ張ってからの~チョッキン!!
バルンスッポンッ!!
そのまま、泌尿器科送りとなり、ファイバーで摘出して頂きました。
原因は、付き添いをしていたはずのご家族が何故かハサミを置いて
看護師に声をかけずに帰ってしまわれていたこと。
いや、ご家族だけが悪いわけではないのですが、
ハサミはできるだけ、持たない、持ち込ませない!
もちろん、ハサミがなくったって、
抜けないように膀胱の中で風船を膨らませているのにも関わらず
自力で引っこ抜いてしまう方もいらっしゃいます。
…痛いですよね…。絶対痛いよ。
とまあ、そんな感じで、じいちゃんもそうなりかねないのです。
もう…
超・絶・心・配!!
そんな不安いっぱいの手術当日の夕方、連絡が入りました。
〝手術は無事終了、だけど今夜は、集中治療室“
ですよねー!ちなみに翌日も、
術後トラブルもなく順調…だけどうつろうつろすると
ライン系(尿バルン、ドレーン、点滴等)をいじるため、
ナースステーション横のお部屋に一晩お泊りと相成りました。
そりゃあそうです!
だって、じいちゃんだもの。
結局、若干のラインいじりはあったものの
心配していた不穏からの事故も起きることもなく、
術後2日目には、元のお部屋に戻ることが出来ました。
看護師さん、適切な判断と手厚い見守りをありがとうございました!
でも、じいちゃん、
それ以後も時々深夜のナースステーションでお世話になっていたそうです。
不穏ではありませんヨ。
眠れなくて、看護師さんとおしゃべりをしていたそうです。
ふふふ♪
やっぱりね!
マツコの感覚は間違っておりませんでした!
やっぱりうちのじいちゃんは、ナースゴコロをくすぐる
アイドル患者さんの気質を持っていらっしゃいました。
そういう患者さんって、絶対にいらっしゃるんですよね。
贔屓とかではなく、看護師にとって一種のアイドル。
今回のじいちゃんの入院の時は、
自分がナースであることをひた隠しにしていましたが、
うちのじいちゃんの愛しさについて、
看護師さん達とお話してみたかったなあと思います。
そう!次回は、
身内の入院、自分の正体を隠したがるナースについてです☆
じいちゃんシリーズ、まだまだ続きますっ!
お楽しみに~!!
マツコ