医療従事者の派遣に関する法律
労働者派遣法(「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」)において、派遣が法律で禁止されている業務(適用除外業務と呼びます)がいくつか存在し、看護師を含む医療従事者は、そのうちのひとつに定められています。そのため原則として、病院や医療機関に看護師を派遣することはできません。しかしながら、例外があり、派遣しても問題ないケースがあります。
以下が実際に、抜粋した記述となります。
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◆病院・診療所等における医療関連業務の禁止◆
医師、歯科医師、薬剤師の調剤、保健婦、助産婦、看護師・准看護師、栄養士等の業務。
ただし、以下の場合は可能である。
(1)紹介予定派遣
(2) 病院・診療所等(介護老人保健施設または医療を受ける者の居宅において行われるものを含む)以外の施設。
(社会福祉施設等)で行われる業務。
(3)産前産後休業・育児休業・介護休業中の労働者の代替業務。
(4)就業の場所がへき地・離島の病院等及び地域医療の確保のため都道府県(医療対策協議会)が
必要と認めた病院等における医師の業務。
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それでは(4)を除いた(1)~(3)について、詳しく解説していきます。
看護師派遣が許可されるケース1/紹介予定派遣(TTP)
前述のとおり、看護師・准看護師、医師、歯科医師、調剤薬剤師、保健婦、助産師、栄養士といった医療従事者は、労働者派遣法で派遣が禁止されています。ただし正社員としての雇用を前提とする「紹介予定派遣」については、派遣は例外的に許可されています。
紹介予定派遣は、契約書に明記された期間は派遣として働き、双方が納得の上で正社員になるというものです。実際に一定期間働き、職場のことを十分理解した上で、正社員になるという働き方です。もちろん「想像していたのと仕事内容が違った」「業務を遂行するに足る知識や手技が不十分」等の理由で双方が納得しなければ、派遣期間の満了をもって契約が終了というケースもあります。
看護師派遣が許可されるケース2/病院、診療所以外の施設への派遣
上記以外でも、看護師の派遣が許可されている ケースがあります。それは、特別養護老人ホームや有料老人ホーム、身体障害者療護施設など、福祉施設内にある診療所への派遣です。例えばデイサービスセン ターや介護支援センターといった社会福祉施設での業務については、法律で看護師派遣を認めているため、問題ないということになります。
実際に派遣会社が取り扱う求人情報の多くは、特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、デイサービスなどの就業先がメインとなっています。
看護師派遣が許可されるケース3/産育休代替派遣
看護師は、女性の占める割合が極めて高い職業のひとつであるがゆえに、結婚・出産という人生の一大イベントで職場を離れる看護師はけっして少なくありません。近年は女性の社会進出、産休・育休制度の拡充も進み、出産を経て、元の職場に復帰する看護師も増えつつありますが、その間の労働力不足は大きな課題のひとつです。
こうした背景を踏まえ、労働者派遣法では、産休・育休によって生じた欠員に対する代替労働力として、看護師の派遣を認めているのです。
一般事務や営業とは異なり、生命を預かる職種である看護師の派遣は、決められた条件でのみ許可されていることがご理解いただけたかと思います。当然、派遣会社は法律を守る必要があるため、掲載されている求人情報は今回ご紹介したケースに合致したものになっています。
残念ながら、違法な派遣の求人情報が掲載されているケースも、ごく稀にあるようです。そのため派遣で働くことを検討する際には、信頼できる派遣会社を選ぶこと、そして看護師さん自身が、違法な求人でないことをセルフチェックすることを心がけましょう。疑問に思ったことは率直に派遣会社に質問し、グレーな部分をクリアにした上で、安心して働ける就業先を見つけてください。
スーパーナース編集部
看護師の働き方を支援して30年の株式会社スーパーナース。
派遣や転職をはじめとした就業経験豊富な看護師と編集スタッフが「看護師のはたらく」に関する情報を日々お届けします。