Vol.004 痛~い思い出
今回は、若かりし頃の失敗談です。
大学病院の消化器内科病棟に勤務していた頃のお話です。
男性の大部屋に元大工の棟梁Gさんが入院してきました。小柄なGさんですが、元大工の棟梁、がっちりした体格の持ち主でした。アルコールが原因の肝疾患で入院。付き添ってきた娘さん(元ヤンキー、今ヤンママ)が
「父ちゃん、先生と看護婦さんの言うこと、ちゃんと聞いてよ!」とすごい迫力でGさんに言っています。
アルコールが原因なので、一応、「最後に飲んだのいつ?」と確認したところ、「3日前」とGさんは答えました。(アルコールの臭いもしません)
その後、検査、治療が始まりました。娘さんはお仕事をしてるので、面会時間ぎりぎりに着替えだけを持って面会にきて5分ほどで帰られます。
異変が起きたのは入院3日目。「Gさんが暴れてる」と同じ部屋の患者さんからナースコールが。行ってみると、怒鳴りまくって手当たりしだい物を投げつけています。そうです、アルコールの禁断症状が現れたのです。急遽、観察室に移しました。
事故防止のため、両手を抑制しましたが、これがまた暴れる原因に。暫くこのまま様子を見ることになりました。翌日、清拭をしようと抑制を解いた瞬間、顎が外れたかのような激痛が走りました。不覚にも抑制を解き、顔を上げた瞬間に、Gさんの拳が私の頬をとらえていました。
Gさんは入院当日、家族に隠れてお酒を飲んでいました。(アルコールが抜けた後、本人が話してくれました。)その話を聞いた娘さんは烈火のごとくGさんを怒りました。
アルコールが完全に抜けたGさん、大部屋に戻ると壁に向かって背中を丸め反省している熊のぬいぐるみのようにおとなしくなってしまいました。
その後、ご家族の希望で、ご自宅のそばの病院に転院されてしまいました。背中を丸めながら・・・。
抑制することは賛否両論あると思います。でも、あの時両手をいっぺんに外さなければGさんに殴られることもなかったし、Gさんも娘さんに怒られることもなかったと思います。普段のGさんは本当に愛らしい人でした。もっとお話したかったなぁと今でも思います。