海外で看護師として働くとどんな悩みや苦労がある?体験談と対策
看護師として海外で働きたい!国際看護師になりたい!と考えたことはありますか?
グローバルに活躍するイメージや海外での生活は魅力的ですよね。実際に、海外で働くと働きやすさやお給料面のメリットがあります。
けれど、良い面だけではなくデメリットについても充分理解しておく必要があります。
この記事では、実際に海外で暮らして看護師として働くとどんな苦労や悩み、ハードルが待ち受けているのかを紹介します。
今回は、実際にオーストラリアで看護師として働いていた看護師さんに話を聞いて、海外で生活し、看護師として働く際のデメリットとその対策をまとめました。
今後、海外で働くことを考えている看護師の皆さん、海外移住を少しでも考えている看護師の皆さんは、是非参考にしてくださいね。
→続く後編では、デメリット3~5を紹介。海外ならではの孤独や物価の高さなど暮らす上でのお悩みについて解説します。
- オーストラリアで看護師として働いていたMさん(30代後半)
- Profile
日本の専門学校を卒業後、公立系の病院で5年勤務。
在職中、オーストラリアで看護師資格を取りたいと考える。
公立系病院を退職後、オーストラリアの語学学校に入学。1年間英語を集中的に勉強し、IELTS(世界的にメジャーな語学判定試験)のスコアを上げる。
その後、一時日本帰国し派遣ナースとして働いてお金を貯めて、再度渡豪。オーストラリアの看護系の大学に入学し、オーストラリアで看護師免許(2年間)を取得した。免許取得時は35歳。
オーストラリアの公立系の病院で約3年勤務。 - 現在は、帰国して保育園看護師をしている。
デメリット1◆資格をとるまでのハードルが高い
海外で看護師として働くことのデメリットの1つは、海外で働くための資格取得が大変なこと。
看護師は世界中にいますが、看護師免許は世界共通ではありません。
そのため、海外で看護師として働く際は、日本で取得した看護師免許が使えないことがほとんど。その国や州で求められる資格が必要になるのです。
海外で看護師として働くことを夢見ても、その地で必要な資格取得までがあまりにも大変で断念してしまう人も少なくありません。
►必要条件を満たすまでに数年単位で時間がかかる
国や州によって異なり、取得に数年かかる
海外で看護師として働くには、その国や州によって異なる必要条件があります。
人気のある国でいくつか例に挙げてみましょう。
アメリカ・カナダ
・看護師として必要単位があるか
・必要就労経験は満たしているか
このような審査の上、資格試験に合格することが必須。
さらには、語学試験、現地での実習経験が必要なケースもあります。(州によって異なります)
ヨーロッパ
スウェーデンではスウェーデンの医療法等、ノルウェーではノルウェーの保険規則等(3週間)のプログラム受講が必要。
オーストラリア
Mさんが働いていたオーストラリアでは、語学力審査、オーストラリアの学士教育と同等の教育と認められない場合、ブリッジプログラムを受ける必要があります。
(参考:公益社団法人 日本看護協会海外の看護師資格取得について)※海外での就労を希望される方は、各機関に直接問い合わせ、資格およびビザ取得等について最新情報を確認してください。
上に挙げた例のように、現地で働く看護師免許を取得するためには、数年は要することが見込まれます。
大変なことはそれだけではありません。語学習得、現地の看護学校に入り必要資格取得に伴って資金も必要になります。事前にまとまった金額を貯めておく必要があります。
さらには、苦労して看護師免許を取得しても1年、2年などの期限付きであったり、更新が必要など、安泰とはいえません。
【体験談】「現地で働ける看護師資格取得に計4年費やした」
- オーストラリアで看護師として働いていたMさん(30代後半)
- 同じ看護師とはいえど、やっぱりオーストラリアで看護師になるということは簡単なことではありませんでした。
英語力も必要だし、大学に入るために語学学校に通ったり、その後に資格取得のための大学に入ったり。私はトータルで4年くらいの時間を費やしました。そのぶん、看護師資格をとれたときはとても嬉しかったです。
対策①情報収集がキー
もっとも大切な対策は、事前の下調べを入念に行うこと。
漠然と、「海外で看護師として働きたい」と考え、やみくもに語学を勉強しはじめるなど見切り発車で行動するのは危険。まずはどの国、どこの州で働くとどうなのかをリサーチしましょう。
とくに、同じ国であっても州により条件が異なることがあるため、「ここで働きたい」という明確なターゲットを絞って、着実に必要な条件を満たしていくことが大切です。
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具体的なリサーチ方法
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- ウェブ検索、SNS
最新の情報やニッチな情報を見つけることができます。どの国、どの州で働こうか考えたり、希望する国で実際に働くとどういうことが待ち受けているのかリサーチするのに◎。なかには、特異なケースや間違った情報もあるので注意が必要。 - 留学エージェントなどの業者
希望とする国で看護師として働くためのピンポイントでぴったりの業者は難しいかもしれません。けれど、これまで留学経験がない、海外での生活経験がない場合、ひとつの参考として資料請求をしたり、相談にいくのは◎。 - 経験者を探す
実際に海外で看護師をしていた人、現在も海外で看護師をしている人に連絡をして、話を聞いたり相談にのってもらうと良いでしょう。 - 各国の機関に直接問い合わせる
アメリカは各州のNursing Board 、オーストラリアはAustralian Health Professional Regulation Agency等、各国の機関のHPをチェックしたり、直接問い合わせするのも大切。言語のハードルがあったり、返事がすぐにこなかったりする事もあるので根気強く調べましょう。 - 書籍
本は、多岐にわたって情報が詰まっていることが多いです。しかし、情報が古いこともあるので、鵜呑みにしないようにしましょう。
- ウェブ検索、SNS
対策②理想を描き、粘り強く頑張る
海外では、思い通り・計画通りに事が運ばないことはよくあります。
看護師として働くだけではなく、どんな仕事であっても海外の就労ビザで苦戦したことがない人はほぼいないのではないでしょうか。
窓口の担当者によって対応が変わったり、振り回されてしまったり、また「話が違う」なんていうことも。看護師として働くために下調べをしっかりとして、必要なステップを踏んでいても、スムーズにいかないことが出てきます。
そんな時には、粘り強さが武器になります。その国で看護師として働く理想の自分をイメージし、目標に向かって一歩一歩進むよう頑張りましょう。
嫌なこと、上手くいかないことがあっても「じゃあ明日、こっちの方法でトライしてみようかな」と切り替えられるタフさがあると良いですよ。
コチラの記事も参考に!
デメリット2◆語学の習得が必要
海外で看護師として働くことのデメリットの2つは、やはり語学習得。最初の壁としてぶつかりがちです。
日本人であっても、日本語で看護や医療を学び、看護師として働くことは決して簡単なことではありません。それを外国語で行うのです。当然ながらより難しくなります。
根気強く学び続けないと難しい
仕事で医療に関わる以上、ちょっとした言い間違いや聞き間違いも大問題に!
患者さんとのコミュニケーションスキルも求められるので、看護師として働けるレベルまで語学を習得する難易度は高いです。
また、医療用語、病院で使う言葉、患者さんとコミュニケーションを取る際に頻発するフレーズなどがあります。そのため、通常の英会話では不足なので常に学び続ける姿勢が大切です。
「絶対に海外で働きたい!」といった強い気持ちがないと勉強し続けることは難しいかもしれません。
【体験談】「英検1級に近い英語力を求められた」
- オーストラリアで看護師として働いていたMさん(30代後半)
- 英語はどれだけやっても難しいなと感じます。特に医療英語は普段聴き慣れない難しい言葉が多いので難易度は高いです。
オーストラリアも英語がネイティブの方ばかりではないので、お互いにコミュニケーションに時間がかかることも。
また看護系の大学に入る時はIELTSのスコアも7.0程度の英語力を求められます。英検だと1級近い英語力を求められるので、かなり勉強は必要になりますね。
対策①現地の語学学校に通う
海外で看護師として働くことを考えた際、まず語学習得で何をしようと思いますか?やはり、普段の生活をしながら隙間時間にオンライン英会話をはじめるなどの方法がてっとり早いです。
しかし、求められるレベルは日常会話をはるかにしのぎます。マイペースで英会話を独学していると時間が無駄にかかりがち。コツコツやっているつもりが、目的のレベルに到達できないこともあるので注意が必要です。
また、たとえば英語であっても、国によってなまりや独特のフレーズがあったりします。
そのため、ある程度の単語力や基礎語学を身につけたら働きたい国の現地の語学学校で集中的に学ぶことが、英語習得の最短ルートです。
対策②親しみのある言語の国を選ぶ
語学は、短時間で習得するのは難しいです。
- 隙間時間に単語を覚える
- 海外ドラマを字幕なしで観る
というように、勉強し続けることが必要。
もし、苦手意識があるものだと、毎日の隙間時間にやることが苦痛になってしまいます。
だからこそ、「昔からアメリカのカルチャーが好き」「イギリスの音楽が好き」「オーストラリアに高校生の頃留学していて、病院で看護師さんの姿をみて憧れた」など、憧れや親しみのある国の言語を選ぶとGOOD!勉強のモチベーションも上がりますよ。
コチラの記事も参考に!
→続いて、デメリット3~5は「コチラの記事」へ。
スーパーナース編集部
看護師の働き方を支援して30年の株式会社スーパーナース。
派遣や転職をはじめとした就業経験豊富な看護師と編集スタッフが「看護師のはたらく」に関する情報を日々お届けします。