「看護師として仕事をしたいけれど、病院以外の環境で働いてみたい」と思っている方は、意外に多いのでは?
ひと昔前までは、看護師は病院の看護職に就くものと思われていました。しかし、現在ではさまざまな環境で看護師の資格を活かして働ける場所が数多くあります。
そこでこの記事では、看護師が資格を活かして働ける「病院ではない職場」をリストアップしてご紹介します。
「こんな意外な職場で看護師ができるなら、ぜひ挑戦したい」「医師・看護師以外の人と一緒に働くのも新鮮!」と思えるような、新しい働き方がきっと見つかるでしょう。
病院以外で看護師が働くメリット
看護師資格を活かし、病院以外の職場で仕事に就くことには、以下のようなメリットがあります。
現在病院勤務で転職を考えている看護師さんなら、病院ではない職場に看護師として転職することも一考してみては?
1.看護業務には付き物といわれてきた夜勤や残業がない、または少ない
一般企業や教育機関などで働くと、まず夜勤はほとんどありません。
また、看護師がそれらの職場で働く場合は業務の性質上、残業も発生しにくい傾向にあります。
2.医療ミスや生死にかかわる事態などへのプレッシャーが少ない
看護師の悩みの種といえば、「医療ミスにかかわることへの不安」や「患者さんの生死を左右する事態へのプレッシャー」が挙げられます。
しかし病院以外で働く場合、重症の患者さんと接する機会は少なくなるため、命にかかわる事態に直面することも減るでしょう。
また、ご自身が医療行為にあたる機会も少なくなる仕事に就けば、ミスへの不安もある程度は低減できます。
看護師資格が活きる病院以外の仕事
「病院以外で働くとなると、看護師資格を活用できない」と思うかもしれません。
しかし、看護師転職サイトに登録するなどして求人を検索してみると、「看護師を求めている一般企業や一般の公的機関」などは意外にたくさんあります。
看護師の資格を役立てつつ、病院以外の職場で看護師として働くことも十分に可能ですから、関心をお持ちの方はぜひ転職先選びのご参考にしてください。
1.保育園看護師
医療機関だけではなく、教育機関にも看護師を常駐させる職場が増えています。
その代表的なものが「保育園」です。
特に、0歳児~1歳児の保育を行っている園において、保育園看護師の求人が多い傾向にあります。
その理由は、都道府県によっては条例で「園で保育を行う0歳児の人数が一定数を超えると、看護師の常駐が必要」と定められていることもあるためです。
日常の仕事は、園児や保育士・教諭の健康管理がメインです。
感染症予防の指導を行ったり、事故によるけがを防ぐためのアドバイスを行ったりします。
また園児の保護者さんに対しても、園児の健康管理について説明を行うことがあります。
もちろん、園児や保育士・教諭が体調を崩したときには看護師として対処します。
保育園看護師のメリット
保育園なので、夜勤は基本的にありませんし、残業も多くはなりません。
土日など園がお休みになる日は、看護師さんもしっかりお休みできます。
保育園看護師のデメリット
日常的には看護業務というより、保育のお手伝いを任されることが中心です。
医療行為の技能などを向上させたい看護師さんの場合は、その機会が減ってしまうためデメリットになり得ます。
保育園看護師の具体的なお仕事内容を知りたい方は、こちらもぜひご参考にしてください。
→保育園看護師の具体的なお仕事内容
2.介護・福祉関連施設の看護師
病院に比較的近い環境で働くことができ、看護師としての精神的な緊張やストレスの少ない職場として、介護施設などの福祉業界も人気を集めています。
介護・福祉施設のなかで、看護師が常駐するおもな職場といえば「デイサービスセンター」や「高齢者向け施設(介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、有料老人ホーム)」が挙げられます。
介護・福祉施設で働く看護師のメリット
これらの施設で看護師は日勤勤務が中心となり、夜勤などは基本的にありません。
残業もほぼ発生しないため、育児や介護・プライベートとの両立もしやすい点がメリットでしょう。
また、重症の患者さんも少ないため心理的にゆったりと仕事にあたることができ、医療ミスへの不安など心理的ストレスも減らせます。
介護・福祉施設で働く看護師のデメリット
医療行為に携わる機会が少ないため、現場でのスキルを向上させたい方や大切にしたい方には不向きかもしれません。
また、同僚の看護師さんも中高年の方が多く、若い看護師さんだとコミュニケーション面でやりづらさを感じる可能性があるかもしれません。
介護・福祉施設への看護師の転職に関しては、こちらもぜひご参考にしてください。
→未経験だけど介護の仕事がしたい
3.健診・人間ドックセンター、献血センターの看護師
病院にかなり近い環境で働け、夜勤や残業がない職場として人気の健診センター・人間ドックセンターや献血センター。
看護師として医療行為に携わる機会も多く、臨床で学んだ採血や検査などの技能が存分に活かせます。
健診・人間ドックセンター、献血センターで働く看護師のメリット
病院と似ている環境で、大きな違和感を覚えずに働けることは大きなメリットです。
夜勤や残業がなくワークライフバランスも取りやすいため、家族との時間やプライベートを充実させられるでしょう。
また、重症患者さんが訪れることもほぼないため、患者さんの生死を左右する事態で精神的に重圧を受ける機会も減ると思われます。
健診・人間ドックセンター、献血センターで働く看護師のデメリット
病棟勤務で夜勤・残業を多くこなしてきた看護師さんが転職すると、勤務時間が減って収入が少なくなる可能性があります。
また、専門的なスキルを職場で磨ける機会は減ってしまうため、スペシャリストを目指すにはご自身で学会に入るなど、一定の努力が必要になるかもしれません。
健診センターのお仕事内容に関しては、以下もご参考にしてください。
→健診の具体的なお仕事内容
4.医療機器会社の「フィールドナース」
看護師資格を活かしながら、一般看護業務とは異なる働き方ができるのが「フィールドナース」の仕事。
医療機器会社に勤め、顧客(医療機関など)に製品のプレゼンテーションを実施したり、製品導入などで営業活動の支援を行ったりする看護師です。
フィールドナースとして働くメリット
勤め先が一般企業なので、土日祝日は基本的にお休みできます。
夜勤もなく、一般的な会社員と同様の働き方ができることは、不規則な勤務を強いられていた看護師さんにはメリットになるでしょう。
また、仕事でのコミュニケーションはおもに「メーカーと顧客」という立場になるため、これまでになかったBtoB(会社対会社)のお付き合いが新鮮に感じるかもしれません。
フィールドナースとして働くデメリット
医療機器会社には外資系企業も多いため、働くには一定以上の語学力が求められます。
また、医療の世界にはなかった「社会人としてのビジネスマナー」が要求されるため、名刺の交換やビジネス敬語など最初に身につけるべきことが多くなるでしょう。
また、看護師でありながら医療行為に携わる機会はほぼなくなり、転職後は「会社員」として働くことをイメージしておいたほうが良いかもしれません。
5.産業看護師・企業看護師
一般企業に社員として勤め、社内の健康管理室や医務室などで働く看護師を「産業看護師(企業ナース)」と呼びます。
日常的には従業員に対し健康指導や健康相談を行う業務がメインなので、看護師資格と同時に保健師資格を持つ看護師さんが歓迎される傾向にあります。
また、社内で従業員向けの健康診断を行う場合は、健診の手伝いもします。
産業看護師、企業看護師として働くメリット
企業のカレンダー通りに年間休日が決まるため、土曜・日曜を中心に休むことができます。
また、夏季と年末年始には長期休暇があることも多く、まとまった休みが取得しやすい傾向にあります。
夜勤はなく、残業も基本的にほとんどないため、仕事とプライベートのバランスも取りやすいでしょう。
産業看護師・企業看護師として働くデメリット
注射や採血などの処置にかかわる医療行為の機会は少なくなるため、それらの技能を今後さらに磨きたいと考えている看護師さんには不向きかもしれません。
また、企業の従業員を限定的に診る業務に終始することとなるため、さまざまな世代・属性の患者さんとコミュニケーションを取る機会は減ってしまうでしょう。
6.訪問看護ステーションでの仕事
在宅医療が国策の一環として推奨されるなか、訪問看護業界の拡大が進んでいます。
訪問看護ステーションでは、まさに今多くの看護師が求められている状況。「できれば看護業務から離れたくない」という方には、おすすめの職場です。
患者さん宅への移動や、重い荷物を持つ可能性などで体力もある程度要求されますが、夜勤や残業はなく、ご自身の裁量で仕事量やスケジュールの調整ができる点も魅力です。
訪問看護ステーションで働くメリット
夜勤や残業は基本的にはなく、ワークライフバランスは比較的取りやすい仕事です。
また、夜勤がない割に給与は高めに設定されている職場が多く、収入面での満足度が高い仕事でもあります。
また、1日中フルタイムで働くこともできますが、希望次第では時短勤務も選べます。
たとえば午前中のみ、午後の3時間だけなど、ご自身で働き方を自由に決められる利点もあるでしょう。
訪問看護ステーションで働くデメリット
基本的に看護師さんが一人で患者さん宅へ出向き、責任を持って看護を行うことが求められます。
そのため、看護師として一定の経験や知識が要求されますし、精神的なプレッシャーを感じる機会はあるでしょう。
また、訪問看護職は業界としてもまだ新しく、制度や従業員のフォローに関する整備はまだこれからという状況であることも踏まえなければなりません。
訪問看護のお仕事内容に関しては、以下もご参考にしてください。
→訪問看護の具体的なお仕事内容
上記でご紹介した働き方以外にも「イベントナース(テーマパークやイベント会場・結婚式場などの救護室に勤める仕事)」や「ツアーナース(団体観光ツアーの添乗看護師)」など、単発アルバイトがメインのお仕事もあります。
また、「治験コーディネーター(CRC)」のように、看護の知識を活かしつつデスクワーク中心の仕事に就ける業種も選べます。
病院に限らず、看護師が活躍できる職場はさまざまな分野に拡大されていることが分かりますね。
未経験で新たな仕事を始める不安の乗り越え方とは
ここでは、看護師が未経験の職場に転職するにあたり感じた不安や、その乗り越え方をご紹介します。
1.収入減
夜勤や残業を数多くこなしてきた看護師さんが不安に思うのは、やはり「働き方改革」には付き物の収入問題。
これを克服するには、やはりモデル収入を確認して転職を考えることが得策でしょう。
看護師の病院以外の転職先で、収入が高めの仕事といえば「フィールドナース」や「訪問看護ステーション」、「治験コーディネーター」「臨床開発モニター」などが代表的な職種です。
2.人間関係の問題
看護師をしていて人間関係で悩む方は多いといわれますが、未経験職に転職するとなれば「転職先の人間関係がまったく想像できない」と、不安に思う方が多いようです。
しかし、実際に転職すると「病棟よりも和気あいあいと働ける」「対人ストレスが減った」という声も意外に多く集まっています。
看護師の人間関係をシビアだと感じていた方の場合、かえって働きやすくなる可能性もありそうですね。
まとめ
今回は、看護師が資格や経験を活かせる病院以外の転職先について、代表的なものを6つご紹介しました。
看護師さんが病院以外の職場に転職する際は、以下のことに注意すると良いでしょう。
・譲れない条件(収入や勤務時間など)を絞り込み、それぞれに優先順位を付ける
・それらを踏まえつつ視野を広げ、希望する優先度の高い条件で志望先をピックアップする
・未経験であることを意識し、入職後の教育や研修制度が設けられているかも確認
未経験の職場へ移ることには、不安が大きいものです。
しかし、実際に未経験の職場に転職して「良かった」と思えている人もいます。
今回ご紹介した6つの仕事は「看護師資格を活かせる」ことがポイント。
病院の仕事ではなくなっても、看護師の資格や経験を活かして働ける安心感は大きいのではないでしょうか。
スーパーナース編集部
看護師の働き方を支援して30年の株式会社スーパーナース。
派遣や転職をはじめとした就業経験豊富な看護師と編集スタッフが「看護師のはたらく」に関する情報を日々お届けします。