「育児休暇(育休)は、その制度を設けている職場だけで取れるもの」と、思っているナースさんは多いかもしれません。
しかし、法令を確認するとそうとは限らないことが分かります。
「自分は派遣ナースだから育休は取れない」と思い、早急に退職を決めてしまうと損をしてしまうかも。
この記事では、派遣看護師の育休取得に関する情報をご紹介します。
「自分は派遣だから育休はない」と誤解せず、妊娠が分かったらどんなことを確認し、どう行動すべきかを知っておきましょう。
育児休暇はどんな人が取得できるのか
産前・産後休暇(産休)は労働基準法で、育児休暇(育休)は育児・介護休業法で、所定の条件を満たしたすべての労働者が取得できると定められています。
「正社員・正職員でなければ取れない」「派遣職員は産休・育休制度の対象外」と考えている方もいるかもしれませんが、それは大きな誤解であることを知りましょう。
派遣で働いている看護師も育児休暇を取れる?
育休制度は、法律で定められている制度で、条件を満たせばすべての労働者が取得できると先に述べました。
つまり派遣社員や派遣職員でも、育休の取得は法令上可能ということになります。
ここではさらに、派遣看護師が育休を取得できる法令上の条件や、育休を申し出やすいのはどんな職場であるかなどについて、ご説明します。
1.派遣看護師が育休を取得できる条件
派遣で働いているナースさんが育休を取れる法令上の条件は、以下のとおりとなります。
【1年以上、同一の事業主に雇用されていること】
3か月や6か月などの契約期間で働く派遣ナースさんは「自分は対象外なのかも」と思うかもしれません。
しかし、派遣ナースさんが雇用関係にあるのは「派遣先」ではなく「派遣元」です。
つまり、登録している人材派遣会社が雇用主となるのです。
同じ人材派遣事業者を派遣元とし、1年以上勤続していれば育休は取得できると考えましょう。
【お子さんが満1歳6か月を迎える日の前日までに契約が満了し、それ以降の派遣契約が更新されないと分かっていないこと】
上記のように書くと複雑ですが、分かりやすく言うと「今後も期限を具体的に定めず、引き続き派遣契約を更新する予定があること」ということです。
ちなみに、2歳まで育休の再延長を申請する場合には、満2歳のお誕生日前日までに契約が満了し、それ以降の派遣契約が更新されないと分かっていなければ延長取得が可能です。
2.派遣看護師の育休取得に対する意識は、職場によって異なる
法令上は派遣看護師も、条件さえ満たせば育休を取得できることが分かりました。
しかし、どんな職場でもスムーズに育休の取得ができるとは限りません。
ここでは、派遣看護師で育休を取る際に想定される問題を、職場のパターンに分けてご紹介します。
1.育休取得に寛容な場合
他の派遣ナースさんも多く働いていて、代任を立てやすい状況が整っている職場はおおむね育休取得にも寛容かと思われます。
過去に派遣ナースさんが育休を取った前例などがあれば、より育休を取得しやすい状況であると考えられるでしょう。
とはいえ、報告をぎりぎりまで引き延ばしてしまうことは職場に対してあまり誠実な対処とはいえません。
産前・産後休暇を確実に取得できるよう、妊娠が分かり次第職場へ報告して早めに産休・育休取得の手続きを始めましょう。
職場の貴方に対する印象が良ければ良いほど、育休明けの職場復帰もスムーズになります。
2.育休取得に対して厳しい場合
他に派遣ナースさんがいない職場やごく少数の職場は、派遣職員も育休を取れることがまだ職場に知られていない可能性があります。
実際に、介護・育児休業法が整う2005年までは派遣で働く人は育休を取れませんでした。
また、働き始めた直後に妊娠が分かった場合などはあまり良い顔をしてもらえない可能性があります。
職員の数がごく少数の職場も、穴埋めが難しいことで育休取得を好意的に考えてもらえない可能性があります。
渋々対応してもらうような事態になれば、育休明けの復帰にも支障が出るかもしれません。
この場合も、確実に育休を取るためには早めに職場への報告を済ませ、引き継ぎなどをスムーズにできる状態にしましょう。
少しでも職場側の心証を良くするために、努力が必要ですね。
妊娠が分かったら、派遣看護師がすべきこと
妊娠はお祝いすべき出来事ですし、ご自身にとってもうれしいことでしょう。
とはいえ浮き足立つことなく、しっかりと今後のことを考えて礼節をもった対処をしましょう。
1.妊娠したと分かったら、すぐに職場に丁寧に報告
出産を控えている状況が分かり次第、すぐに報告することが大原則です。
上司に伝えることはもちろん、仕事に穴を開けて手間をかけることになる同じ職場のナースさん1人ひとりにも丁寧に挨拶しましょう。
2.必ず今後の予定を決め、職場と日程調整をする
今後の日程を、きちんと職場と調整しておくことも大切です。
以前育休を取得したことのあるナースさんが職場にいれば、その方に聞くなどしながら計画的に休む日の予定などを決めましょう。
3.体調を心配されたら、体力不安の少ない仕事を積極的に取り組む
妊娠は病気ではないと言われても、体調や体質が大きく変化する出来事です。
体力的な負担の少ない業務は積極的に引き受けるなどし、ご自身が体力の要る仕事をできなくなることで職場へ負担をかけないよう配慮しましょう。
まとめ
今回は、派遣看護師さんが育休取得はできるのかどうか、また妊娠が分かったときの育休取得に向けた対処法などについてご紹介しました。
派遣のナースさんが数多く働き、育休取得実績がある職場なら出産後も派遣で働き続けられる状況が整っているでしょう。
しかし、育児に向かない職場の場合は「すぐ退職してください」と言われてしまう可能性も。
この先結婚や出産を考えているなら、派遣先を変えるなどするか、思い切って正職員やパート職員へ転職する方法も一案です。
ご自身の職場の状況を鑑み、ライフプランと照らし合わせてじっくり考えてみてください。
スーパーナース編集部
看護師の働き方を支援して30年の株式会社スーパーナース。
派遣や転職をはじめとした就業経験豊富な看護師と編集スタッフが「看護師のはたらく」に関する情報を日々お届けします。