看護師として働く男性は、年々増加している傾向にあります。
看護業界は慢性的な人手不足で、性別を問わず適した人材を求めている状況ですし、2002年の法改正によって職種の呼び名が「看護婦→看護師」に変更されたことも男性看護師の増加を後押ししています。
そこで今回は、男性看護師の転職事情についてご紹介します。
給与や働く環境、男性看護師が働きやすい配属先など、さまざまな視点で男性看護師の転職についてまとめました。
転職市場で男性看護師の需要はある?
男性看護師の方の、転職に関する悩みとしてとても多く挙がるのが「男性看護師は転職したくても、転職市場での需要が少なそう」という点。
確かに看護師業界は今でも女性社会という印象が強く、男性の居場所はそう簡単には見つからないだろうというイメージを持つ人も多いでしょう。
しかし、診療科や現場によっては「男性看護師を積極的に求めている」というところも少なくありません。
特に以下にご紹介する職場では、男性看護師は比較的歓迎される状況にあります。
1.緊急・救急外来、手術室
急に重症度の高い患者さんが来院するため、緊急性の高い職場は男性看護師の需要が高くなる傾向にあります。
やはり24時間365日緊張感が求められる職場ですし、体力面で有利な男性は歓迎されるでしょう。
また、女性看護師の得意分野である患者さんとのコミュニケーション能力などもそれほど必要のない現場であるため、特徴として看護師の性別的特徴がそれほど求められないという点も要因と考えられます。
2.男性が多く来院する診療科や外来
女性特有の診療科・外来に女医や女性看護師が多くなるのと同様に、男性患者の多い診療科・外来では男性看護師が求められる傾向にあります。
たとえば「皮膚科の薄毛(AGA)治療外来」や「禁煙外来」、「男性特有の悩みを治療する形成外科」などがその好例でしょう。
「男性看護師がいると助かる瞬間」って?
明るく優しい男性看護師を主人公にしたTVドラマが、2000年代に人気を集めました。
その印象が強いせいか、現在でも男性看護師は「ナースマン」と呼ばれることがあります。
子供のころドラマを見て看護師を志し、今も活躍する男性の方もきっといるでしょう。
ここでは、ドラマの中でもたびたび描かれた「男性看護師が病院にいてよかった!」と思うことについてご紹介します。
1.職場の人間関係が和やかになった
業務と直接的な関係はないものの、「看護師=女の業界」という厳しいイメージが和らぎ、男性がいるおかげで癒しが生まれたという声は根強くあります。
2.患者さんの介助など、力仕事で戦力になる
寝たきりの患者さんを起こして移動させる際や、身体的に不自由な患者さんの測定や検査などで力仕事になるときは、やはり男性看護師が大活躍します。
3.思春期の男の子など、男性患者さんの相談に乗れる
10代など微妙な年ごろの男性患者さんが入院すると、その年代の男子ならではの悩みが生まれるもの。
それらすべてに女性看護師が対応することはむずかしく、男性看護師がいれば悩みの相談に応じてくれて助かると思う瞬間は多くあるでしょう。
4.後輩の男性看護師が入りやすい
新人として男性看護師が配属される際、女性ばかりの現場に1人だけ男性を配置することは病院としてもしにくいものです。
しかし、すでに男性看護師がいる現場であれば配属しやすく、先輩・後輩双方のモチベーションアップにもつながって職場が活気づきます。
男性看護師として働くメリット
前の項目では、職場に男性看護師がいることの良さを挙げましたが、ここでは男性看護師の方自身が、看護師として働くメリットをご紹介します。
1.キャリアアップのチャンスが多い
男性の働き方の特徴として、ブランクが生まれにくいという点があります。
女性の場合はライフイベントで休職したり、いったん退職したりする機会が多い傾向にありますが、男性は一度就職したらずっと常勤で働くケースが多いでしょう。
そのため、キャリアを積み上げやすくキャリアアップの機会も多くなります。
2.女性看護師や患者さんから頼られ、居心地が良くなる
力仕事や女性看護師のフォローなど、男性看護師が頼りにされる機会は病院の中では数多くあります。
前の項目でもご紹介した「男性看護師がいてよかった」と周囲の人が感じる場面では、男性看護師本人も居心地よさを感じるはずです。
3.収入が安定している
女性の仕事として、安定していることで人気の看護師業務。
男性にとっても、この仕事で得られるしっかりした待遇は魅力です。
男性の仕事のなかにも、不安定で悩みを抱えがちな職種が多いなか、看護師になれば安定した仕事に就ける点はメリットといえます。
4.転職を考えやすい
男性看護師に限りませんが、看護師はつねに人手不足で求人数が多い仕事です。
万一転職を考える際にも、景況を問わず働き口が用意されている状況である点もメリットになりうるでしょう。
男性看護師ならではの悩みって?
男性が看護師を続けていくことに対するハードルは、以前と比較すればかなり低くなったと考えられます。
しかし、看護業界では女性の絶対数が圧倒的に多いという事実に変わりはなく、それゆえに悩みを抱える男性看護師も少なくないのが実情。
ここでは、実際に現場で活躍している男性看護師の方がどんな悩みを抱えているかについてご紹介します。
1.勤められる診療科や現場が限られる
男性看護師を歓迎する診療科は増えていますが、依然として男性がなかなか就業できない現場も少なくありません。
たとえば、産科・婦人科は女性看護師の独壇場ですし、助産師資格は男性看護師の取得が認められていません。
また、在宅医療が推進されるなかでも訪問入浴・看護の仕事に男性看護師が就くことはむずかしいですし、添乗看護師(ツアーナース)でも男性看護師は採用されにくいといわれています。
2.家族を養うことへの不安
男女の社会的格差がフラットになりつつあるとはいっても、未だに男性は家族を養っていくものという価値観が人によっては根強く残っているものです。
そのため、男性看護師として働いていても職場によって給与面で不安がある場合には、「このままでよいのだろうか」と悩むケースがあります。
3.女性患者とのコミュニケーション
男性看護師の悩みとしては、女性患者とのコミュニケーションがむずかしいという点も多く挙がります。
女性患者の立場からすれば、女性看護師には当たり前にやってもらえても男性にしてもらうのは抵抗があることも数多くあるのかもしれません。
それが承知の上だとしても、やはり露骨に嫌な態度を患者さんに取られてしまうと精神的にダメージを受けるという男性看護師は一定数いるでしょう。
男性看護師が職場でうまくやっていくコツ
ここ10年で男性看護師が2倍に増えたとはいえ、看護師の世界はまだまだ女性中心の職場といえます。
ここではそんな「女社会」である看護業界で、男性看護師がうまくやっていくためのコツをご紹介します。
1.男女の役割を尊重しつつ、性別の違いに固執しない
どちらか片方の性別を軽く扱ったり、「自分は男性だから女の業界に馴染めない」と卑屈になったりすることは避けましょう。
仕事で男性として頼られれば気分よく応じ、同僚や患者さんに対しても相手が女性だからといって自分とは違うという意識を持たず同じ人間同士として接するとよいでしょう。
2.身だしなみや振舞いでは清潔感を優先し、不快感を与えない
男女を問わず、看護師さんは清潔な印象が第一。
男性看護師も、身だしなみでよい印象を与えられるように配慮しましょう。
患者さんに対してにとどまらず、同僚の女性看護師も好感度を持って接してくれるはずです。
また外見だけでなく、言葉遣いや立居振る舞いでも品のない印象を与えないよう、丁寧で柔らかい印象を大切に。
3.女性看護師同士の噂話や陰口はスルーする
あまりそういう職場に馴染みたくはないかもしれませんが、女性の多い職場では噂話が飛び交ったり、陰で誰かの悪口を言う人も現れたりすることがあります。
そんな様子を目にすると、男性看護師の方は嫌な気分になってしまうかもしれません。
しかしそこは不快感を露骨に示すことなく、涼しい顔でスルーするのが賢い立ち回り方です。
関わり合いたくない気持ちを敢えて前面に出しすぎず、すべての職員と分け隔てなく接しましょう。
4.男性看護師が多い診療科を選ぶ
同じ現場で働く男性看護師が他にもいれば、心強いこと間違いなしでしょう。
先輩や同期に男性看護師のいる可能性が高い職場を選び、就職することも1つの手です。
男性看護師のいることが多い診療科には「救命救急科」や「リハビリテーション科」、「整形外科」や「精神科」などが挙げられます。
いずれの科も患者さんを介助する機会が多く、力持ちな人が重宝される職場ですね。
男性看護師の転職で気をつけることとは?
男性看護師が転職する際は、どのような点に注意すればよいのでしょうか。
ここでは男性看護師の転職時に気をつけたい点について、ご紹介します。
1.男性看護師が多く活躍する職場を選ぶ
男性看護師が長く働きながら収入アップをめざすためには、専門職や管理職へステップアップを図るのが最短の近道です。
男性看護師が昇進やスキルアップを図りやすいのは、同じように男性看護師が多く活躍する職場であるといわれています。
2.男性看護師向けの福利厚生が整った職場を選ぶ
看護師業界はまだまだ女性中心の職場になりがちな傾向が残っているので、現場によっては男性の更衣室や寮などが整備されていない場合もあり得ます。
居場所がなければ仕事も長続きしませんから、男性看護師の働きやすさに配慮された福利厚生がしっかりした職場を選択することも大切ですね。
まとめ
今回は、男性看護師の転職事情や男性看護師ならではの悩み、それらを踏まえた男性看護師が転職する際の注意点についてご紹介しました。
まだまだ悩みごとの尽きない男性看護師も多いかもしれませんが、実際に2004~2014年の10年間で男性看護師の人数は2倍近くにまで増加しています。
これは、業界全体で男性看護師の需要が増加し、待遇も向上していることの裏付けでしょう。
今回ご紹介した「男性看護師が求められる職場」や、「転職時に注意したいこと」などを踏まえ、長く勤められる看護師をめざして前向きな転職活動をぜひスタートさせましょう。
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スーパーナース編集部
看護師の働き方を支援して30年の株式会社スーパーナース。
派遣や転職をはじめとした就業経験豊富な看護師と編集スタッフが「看護師のはたらく」に関する情報を日々お届けします。