看護師は体力が要求され、ライフスタイルも不規則になりがちなお仕事です。厳しい仕事だと感じる機会があるたびに、「看護師をやめて他の仕事に転職したい」と考えている人も多いかもしれません。
そこで今回は、看護師から他の仕事に転職する際のメリット、デメリットについてご紹介します。看護師から異業種への転職を考える場合、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。適した職種や収入の問題など、知りたい情報をまとめました。
他職種に転職したい理由と、他職種へ転職するメリット・デメリット
ここでは、看護師が看護師以外の他職種に転職を考える理由についてまとめ、他職種へ転職するメリット・デメリットをご紹介します。
【看護師が他職種への転職を考える理由】
もっとも多いのは「出産・育児」という理由でした。次いで「結婚」、「引っ越し、夫や妻の転勤」、「家族の介護」と続きます。他職種に大きくこだわりがあるというよりは、ライフイベントを機に働き方を見直したいという動機が中心と考えられます。
【看護師が他職種へ転職するメリット】
・看護師以外のさまざまなビジネスの世界を体験できる
看護師の業界は「狭い」と言われることがあります。医療業界自体の特殊性が高いため致し方ないのですが、もっとさまざまなビジネスを体験して視野を広げたいと考えているなら、他職種への転職は有効になり得ます。
・規則的な生活を送れる
看護師は夜勤や残業が多く、生活が不規則にならざるを得ない特徴があります。そのため看護師は慢性的な疲労を抱えがちですし、腰痛などのお悩みを解決できないまま働き続けているというケースも少なくありません。夜勤や残業がない、または少ない他職種への転職で、規則的な生活サイクルに改められるというメリットはあるでしょう。
・家族の行事などに積極的に参加できる
シフト勤務で土日祝日も出勤する病棟看護師などを続けていると、おもに休日に開かれる家族や地域の行事にまったく参加できないという方も多いはずです。土日祝日休みの他職種へ転職することで、それらの行事にも積極的に参加したり、休日に家族で出かけたりできるなどのメリットはあり得ます。
【看護師が他職種へ転職するデメリット】
・収入が減る可能性が高い
シフト勤務や数多くの夜勤・残業をこなしてきた看護師は、その分の手当てが収入に反映されるため、同世代の人たちと比較して収入が多かった方が多いでしょう。看護師以外の他職種へ転職することでその働き方が変化するため、収入は減ってしまう可能性が高くなります。
・看護師資格を持っているのに、それを活かした働き方ができない
看護師の、就職・転職における最大のメリットは「看護師資格を持っていること」です。看護師自体が資格職なので、資格を持っていることで就職・転職に有利になるのは間違いないでしょう。しかし、他職種へ転職するとなるとその最大の強みである資格が活かせません。
・看護師として積み上げてきた経験を活かせない
資格だけでなく、これまで看護師として経験してきた業務の数々も大きな財産です。他職種に転職する以上、それらの経験をキャリアとして活かすことは難しくなり、1からスタートを切ることを強いられてしまいます。
職種や収入について
1.看護師から異業種への転職。どんな職種が向いている?
看護師から別の業界へ転職するなら、せっかく持っている看護師資格を活かした業種への転職がやはりおすすめ。
以下のような職種なら、看護師資格保持者を歓迎してもらいやすいでしょう。
【看護師資格を活かせる人気の職種って?】
看護師資格が転職活動や仕事に有利となる他職種のなかで、特に人気がある職種は以下のとおりです。
・一般企業での医療職
治験コーディネーターや臨床開発モニター、産業看護師など一般企業のなかで医療系の業務を行う仕事は、看護師資格を活かして活躍できる代表的な他職種です。看護師時代に身につけた薬に関する知識を活かし、製薬会社に勤めるケースも多数です。なお、産業看護師はおもな業務が社員の健康相談になるため、看護師に加え保健師の資格を持っていることが求められるケースが多くなります。そのため、産業看護師をめざす方は保健師資格の取得を考えることがおすすめ。
・保育園、学校などの教育機関
保育園で、看護師資格を持っている人が働くケースが増えています。保育ナースさんなどと呼ばれ、園児たちの健康管理に従事する仕事です。保育士の資格がなくても看護師なら転職できるため、保育の世界に関心があるならおすすめ。また保育園に限らず、大学の保健室で看護師として働くことや、児童養護施設の看護師として活躍することも視野に入れられます。
・健康診断センターでの業務
健康診断を専門で行っている健診センターでの仕事も、看護師の転職先として人気です。看護師として長年携わってきた採血などの手技をそのまま活かせますし、夜勤や残業がほとんどない職場のためワークライフバランスも取りやすいでしょう。
【看護師資格を活かしてできる他職種の仕事】
・カウンセラー
企業などの従業員を対象にカウンセリングをおこなう「産業カウンセラー」や、学校の生徒さんやご家族が対象の「スクールカウンセラー」などがよく知られています。転職するにはカウンセラーとしての資格は必要になりますが、特別看護師資格が必要というわけではありません。しかし「人を看る」という仕事の特性上、看護師の経験があれば歓迎されるでしょう。
・治験コーディネーター
新薬や新しい治療法を試す「治験」において、治験を受ける人の手助けなどをおこなう仕事です。医療や看護の知識がある方が就くことが望ましいとされることが多く、治験を受ける人とのコミュニケーションなどを考慮しても、看護師資格があると採用されやすいでしょう。
・健康相談員
健康相談員は企業や公共の施設を訪ねて健康に関する相談を受ける業務ですが、最近では電話やインターネットを活用した健康相談も増えています。電話やネットによる健康相談は、医薬品メーカーや生命保険の会社などが設けているケースが多く、大手企業に勤められるという利点も。
【看護師資格にこだわらない、看護師に適した転職先】
・エステティシャン
人の骨や筋肉などについて、解剖生理学的な知識があればマッサージやリラクゼーション関連の施術も安全で効果的におこなえます。また、看護師資格を持っていることをお客様に伝えると安心感を持っていただける点もメリット。
・ネイリスト
ネイルは人の爪に触れるお仕事ですから、衛生面での知識が役立つ場合が多いでしょう。また、個人サロンなどを開設する場合には、看護師の経験があることをアピールするとよりプラスになるでしょう。
・飲食、観光、販売などのサービス業
サービス業全般は看護師と同様、コミュニケーション能力が活きるお仕事です。笑顔で接することや敬語が身についている点、お客様のご希望を汲み取れる点など、看護師として培ってきた技量を活かせる局面が仕事のなかでとても多くなるでしょう。
2.他職種への転職で、収入はどう変わる?
業種によりますが、夜勤や残業をたくさんこなしてきた看護師の場合、他職種への転職で収入は減ってしまうことが多いでしょう。看護師時代の貯蓄があれば安心ですが、転職後もできるだけ高収入を維持して働き続けたいという希望があるなら、先にご紹介した職種のなかでも看護師資格を活かせる仕事を選ぶとよいかもしれません。
転職に関するお悩み
1.看護師から他職種への転職。実際楽にできるの?
看護師が他職種へ転職するケースは、実際のところかなり少ないといわれています。しかしその主な理由は看護師としての経験や資格を活かして働き続ける人が多いからで、一概に「看護師が他の業界へ転職するが難しい」ということではありません。
準備さえきちんとすれば、他職種へ転職を試みることは別段難しくないでしょう。「看護師=堅い仕事、しっかりした仕事」という世間一般のイメージもあるので、業界を問わず採用には有利になることもあります。
2.他職種への転職は、お悩みの解決につながる?
看護師が他職種へ転職を考える理由は「体力的に厳しい」「出産・育児など環境の変化」「命を預かる仕事のプレッシャーが大きい」などが主体です。しかし、仕事の悩みが転職で簡単に解決できるのかというと、そうはいかないことも多いようです。
時間や体力の面、精神的な不安などからは解放されるかもしれませんが、看護師時代からの収入減や安定していない業種に対する不安などで、別の悩みが出てしまうということもあります。特に収入はぐんと減ってしまうケースも多く、注意が必要です。
現状抱えている悩みを洗い出し、本当に他職種へ転職しなければ解決できないかどうか、まず考えてみるとよいでしょう。他職種への転職を考えるのは、その後でも問題ありません。大丈夫でしょう。
【他職種への転職の進め方について】
看護師から他職種への転職を進めるには、看護師としての転職と比較し長期戦を覚悟する必要があります。看護師は面接が1回限りのケースが多く、選考も速いことが特徴ですが、一般企業などの場合は面接が3回あるなどということも。
他職種への転職の場合、応募から内定まで3週間から1か月ほどを目安に考えるとよいでしょう。さらに現職の引継ぎを行ってから退職することを考えると、その期間をもう1か月ほどプラスする必要が出てきます。応募前の情報収集の期間がさらに1か月とすれば、最短でも転職目標時期の3か月前から準備を始めることを考えたほうが良いでしょう。
他職種への転職で、失敗しないためには
ここでは、看護師が他職種へ転職を考える際に、転職活動に失敗しないためのポイントをご紹介します。
転職する目的をはっきりさせておく
「とにかく看護師の仕事がつらいので、他職種ならなんでも」というようなネガティブな理由だけで転職活動をしてしまうと、目先の手っ取り早い情報に飛びついてしまいあとから後悔することになりがち。「どんな仕事内容を希望するのか」「収入はどのくらい確保したいのか」「休日や働き方の希望は」など、転職してどう働きたいかの目的をはっきりさせましょう。
応募資格をチェックし、看護師経験をアピールできるようにしておく
「どんな仕事でも頑張りたい」とは思っていても、可能なら看護師としての経験を評価してくれる職場に転職できたほうが有難いものです。求人票を探すときには、応募資格をよく確認して「どのような人材を求めているか」に沿って、いかに看護師としての経験をアピールできるか考えてみるとよいでしょう。ちなみに、一般的な価値観では「看護師=面倒見が良い、正確な仕事ができる」などのイメージが持たれています。
まとめ
今回は、看護師から異業種への転職を考えたらまず押さえたい4つのポイントについてご紹介しました。看護師をやめたいと思っていても、まずは一度冷静に考えてみることがおすすめ。転職は考えるにしても異業種にこだわりすぎず、まず看護業界内での転職も選択肢として考えてみましょう。今まで通りなるべく環境を変えずに、悩みの解決が可能かどうかを先に確かめてみるとよいかもしれません。
スーパーナース編集部
看護師の働き方を支援して30年の株式会社スーパーナース。
派遣や転職をはじめとした就業経験豊富な看護師と編集スタッフが「看護師のはたらく」に関する情報を日々お届けします。