看護師はとても離職率の高い職業のひとつです。少し古いデータになりますが、公益社団法人日本看護協会の発表によると、常勤で勤務している看護師の離職率は約11%、年間約16万人と非常に高い数字となっています。これは転職をする看護師の数が多いことを意味しています。
それでは、なぜ看護師の離職率が高いのか、その理由を具体的に見ていきましょう。
看護師の慢性的な人手不足
看護師の離職率が高い理由のひとつが、人手不足の問題です。看護師業界は、長年にわたり慢性的に人手不足の状態が続いており、高齢化が深刻化するなかで、この課題は解決に至っていません。慢性的な人手不足は、現場の看護師一人当たりの業務量増加を助長し、結果として心身ともに疲れ果てた看護師が退職していくという負の連鎖へ生んでいます。実際に激務で体調を崩し退職するケースも少なくありません。調査によると、身体に負担の大きな夜勤の労働時間が多い医療機関ほど、看護師の離職率が高いという傾向がはっきり出ています。
こうした状況を受けて、現場で働く看護師の激務緩和と、より手厚い看護の実現を目的に、日本看護協会主導で、診療報酬改定で看護師配置基準の見直しを行ない「7:1看護体制」がスタートしました。こうした取り組みの成果として、看護師の離職率は少しずつではありますが改善の兆しを見せています。
結婚・出産(女性が多い)
看護師は、女性の占める割合が圧倒的に高い職種です。そのため多くの看護師が、20代~30代の時期に、結婚・出産という人生の転機を迎えます。このタイミングで職場を離れる看護師が多く、これが離職率を引き上げています。もっともその背景には看護師ならではの事情があります。先に触れたとおり、病院や医療施設は人手不足で、つねに看護師を募集しているため、一度退職しても容易に復職が可能です。つまり他の職種に比べると、次の就職に対する心理的な余裕があるのも事実です。
もっとも結婚・出産を経て、子育て一段落したのちに復職する際は、家事や育児と仕事を両立するために、常勤(正職員)ではなく、派遣やパートといった働き方を選ぶ看護師も増えてきています。
スキルアップ・キャリアアップ
看護師は、資格職であり、専門職でもあるため、自分自身のスキルアップやキャリアアップを目的として転職(離職)する方もたくさんいます。専門分野に特化してスキルアップできる病院、自分の希望する業務に携われる病院、管理職として活躍できる病院など、看護師としてのステップアップが、転職を通じて容易に具現化できるため、とくに経験豊富で意識の高い看護師は、離職しやすい傾向にあります。
また看護師の場合、留学のために、あるいは資格取得の勉強に専念するために、職場を離れるというケースも多くなっています。
職場での人間関係
看護師に限らず、職場の人間関係は離職・転職の大きな原因になりますが、とくに看護師は女性比率の高い職種であるため、他の職種に比べると、人間関係に悩み、疲れ果ててしまう看護師さんが多いようです。離職率と人間関係の相関関係ははっきりしませんが、看護師さんに回答いただいた、あるアンケートによると、退職理由の第2位が「人間関係」という結果も出ています。
また、看護師の仕事は大変な激務であり、これに失敗が許されないという心理的重圧がかかると、精神的に余裕がなくなってしまい、人間関係がギスギスしがちであることも否めません。
看護師の離職率が高い理由まとめ
看護師さんにとって、転職・離職は必ずしもネガティブなことではありません。スキルアップ等の理由による離職は、むしろポジティブにとらえるべきですし、たとえ退職理由がネガティブであったとしても、職場環境が変わることで伸び伸びと働けるようになる看護師さんもたくさんいます。重要なのは辞めた後。新しい職場に転職するのであれば、辞めた原因が解消されていなければ、同じ理由で離職することになりかねません。
退職をお考えの看護師さんは、衝動的に辞めてしまう前に、中長期的な視点で自分自身のキャリアを見つめ直し、自分の将来の姿をイメージしながら次の行動を起こしましょう。
とはいえ、働きながら、自分自身で情報を集めつつ、忙しい合間を縫って転職活動を行うのはなかなか骨が折れる作業です。そんなときは看護師専門の人材紹介会社や転職エージェントのサービスを利用しましょう。これらの会社では、病院や医療施設の詳細な情報を持っており、退職の原因をきちんと解消できるお仕事を探してくれるので、非常に効率的に転職活動ができます。相談だけでもまったく問題ないので、気軽に相談してみてください。
スーパーナース編集部
看護師の働き方を支援して30年の株式会社スーパーナース。
派遣や転職をはじめとした就業経験豊富な看護師と編集スタッフが「看護師のはたらく」に関する情報を日々お届けします。